BACKSIDE (バックサイド)

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INTERVIEW

華やかな大会ではなく人目をはばかりストリートに生きる15歳 高森日葵のこれまでとこれから

2023.07.18

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小川凌稀や戸田真人といったトップジバーを抱えるなど、国内最強ストリートクルーとして名高いDIRTY PIMP(以下DP)。彼らが自信を持って世に送り出している映像作品に、小学生の頃から出演している女の子がいる。今年2月、群馬・パルコール嬬恋リゾートで開催された「NISSAN X-TRAIL e-4ORCE RAIL JAM」では女性ライダーとして唯一の決勝進出を果たし、米カリフォルニア州ボレアルのWOODWARD TAHOEにて開催されたジェス・キムラ主催の「UNINVITED INVITATIONAL」にも招待されるなど、確かな実力とともにトップライダーたちと肩を並べてグローバルレベルで活躍する、15歳の高森日葵である。セッションを繰り返すたびにスポンジのごとく、スノーボードのあらゆることを吸収し、自身の滑りをアップデートし続ける日葵がうちに秘める、ストリートで自身を表現する理由とは何なのか。彼女のこれまでとこれからを紐解く。

「羽島でDPクルーのみんながレールをコスっているのを見て、すごく惹かれたことがキッカケです」

──15歳にして国内外のストリートシーンを日々賑わしている日葵ですが、まずはスノーボードとの出会いについて教えてください。

もともと両親が大のスノーボード好きで、私も1歳のときからゲレンデに連れて行ってもらって、3歳くらいからはスノーボードで遊んでいたそうです。当時は(岐阜県)ひるがの高原でお父さんと一緒に滑っていました。家にスノーボードムービーのDVDがたくさんあったので、お父さんに観せてもらって、小さい頃から映像に出てくるようなライダーに憧れていたのを覚えています。小学校1、2年のときからはスノーヴァ羽島(岐阜の室内ゲレンデ。2021年閉館)にも通うようになって、ジブアイテムにも入れるようになって……。このあたりからどんどんスノーボードにハマっていきました。

──スノーヴァ羽島ではどのようなライダーたちと切磋琢磨しながら練習を重ねていたのでしょうか。

小さい頃から鈴木冬生くんが羽島で滑っているのを見ていて、カッコいいなと思っていました。一緒に滑ってもらっていたのは、GOLGODA(愛知・名古屋のプロショップ)のライダーやクルーです。知り合いがいなくてずっとひとりで練習していたんですが、GOLGODAのみんなが私のことを気にかけて、話しかけてくれて。そこからショップに遊びに行くようにもなりました。

──DPの作品に数多く出演していますが、クルーを束ねる“DP”こと平上裕太郎やライダーたちとの出会いについて教えてください。

DPクルーが試写会のためにスノーヴァ羽島に来ていたことがあって、そのとき私も羽島で滑っていたんです。DPクルーのみんながレールセクションでコスっているのを見たときに、すごく惹かれたのが最初の出会いだったと思います。当時の私はレールに入れなかったんですが、そこから練習するようになって。あとでお父さんにDPクルーの滑りが気になったって話をすると「家にDPのDVDもあるよ」と教えてくれて、映像も観るようになりました。

──はじめてDPの撮影に参加したキッカケは?

当時からMiyon(山口美英)ちゃんが私のことをすごく気にかけてくれていて、DPのイベントがあるときには声をかけてくれていたんです。(新潟)石打丸山で開催されていたDP主催のイベントに呼んでくれて、そこで初めてカメラを回してもらいました。ストリートの撮影を初めて一緒にやらせてもらったのは小学5年のときで、Miyonちゃんと(小野崎)海琳ちゃん、(鈴木)冬生くんと一緒に滑りました。同じスポットでやらせてもらえることになったんですけど、すごいやられちゃって。1回目のストリートはそれで終わってしまって、すごく悔しい思いをしたのを覚えています。それまでずっと、パークのレールもストリートのレールも同じ感覚だろうと思っていたんですが、実際スポットに行ってみると、とにかくアプローチがタイトで、ラインがわからなかったんです。この撮影のあとは「自分にはまだ実力が足りなかったんだ」と思って、羽島でレールを練習したり、DPの映像を何回も観てストリートの研究をしていました。

──今の日本のスノーボードシーンでは、若いライダーはまずコンペティションシーンに足を踏み入れることが多くなっています。その中でもストリートでの映像表現の世界を選んだのはなぜでしょうか。

私が昔からDVDで観ていたのは、派手なジャンプというよりかはジブの映像が多かったということもあって、スノーボードの中でもジブアイテムで遊ぶことが最初から好きだったんです。あとはMiyonちゃんがストリートで滑っている映像から影響を受けたことも大きいと思っています。観てきた映像の中で滑っているのは基本男の人ばかりだったんですが、女の人なのにカッコいいスノーボードをしていて、しかもストリートというところで活躍している。すごく憧れて、私もストリートでこういう映像を残せるようなライダーになりたい、と思うようになりました。お父さんたちもそういう映像が大好きだったので、すごく応援してくれています。

「このスポットでは自分しかその技をメイクしていない、という映像を残すことに価値があると思っています」

──初めてのストリートは悔しい結果に終わってしまったとのことですが、その後の活躍には目を見張るものがあります。どのように練習を積み、今の滑りに到達したのでしょうか。

雪の上ではとにかく基礎を練習していました。最初のストリート撮影に挑んだときは、50-50が苦手だったんです。FSボードスライドが得意だったので、羽島やゲレンデでもまずその技からかけていたりしたんですが……。ストリートでのチェックでそれは危ないので、普通、最初は絶対50-50をかけるんです。50-50が苦手だとチェックすらできないので、とにかく基礎を固めるために練習していました。どのスポットで誰がどんな技をやるかを覚えてしまうくらい映像を何回も繰り返し観て、ラインを研究していました。小学6年の冬にもう一度、DPさんとMiyonちゃんにお願いして撮影に同行させてもらったときには、練習のおかげで対応力が上がったことと、DPさんが私にもできそうなスポットをすごく考えてくれたこともあって、安心して撮影に臨むことができました。チェックで安定して50-50をかけれるようになると、レールに慣れてから技にトライできるので、怖がらず、集中できるようになったんです。

──日葵がストリートにこだわる理由を教えてください。

ストリートのスポットでこだわりの技をメイクしている映像を残す、っていう部分に価値があると思っていて。パークにあるジブアイテムだったら、誰がどんな技をメイクしたのかっていう記録はもちろん残らないですよね。DPクルーのみんなは、同じスポットでも技は絶対に被らないように意識していることもあって、「このスポットでは自分しかその技をメイクしていない」という映像を残すことができるからこそ、ストリートでやる意味があるのかな、と思っています。

 

 

──これまでのストリート撮影の中で、特に印象に残っている撮影はありますか?

(新潟)湯沢のスポットで、Miyonちゃんと一緒に行ったハイレールが印象に残っています。アプローチもけっこうタイトなんですけど、レール自体がすごく高くて。パークにはない形だったので、初めての感覚でした。すごい緊張したんですが、Miyonちゃんが「日葵なら大丈夫だよ」とプッシュしてくれたり、先に50-50をかけてラインを見せてもらったりしたおかげで、自分もトライすることができました。攻略するまでMiyonちゃんにすごく助けてもらったので、そういうところが印象に残っている撮影です。

──そこで学んだことが今に活きている、そんなエピソードがあれば教えてください。

このときに新しく感じたのは、自分にはフリーライディングが足りていないということでした。ストリートみたいにアプローチがタイトなところだと、レールに入るまでの動きを安定させないと、そもそも50-50すらかけられなかったり、とても危ないんです。ストリートはジブばかりだからレールだけ練習すればいいや、そう思っていたんですが、そこからはゲレンデを滑るときにパークだけじゃなくてフリーライディングも楽しむようになりました。ほかにも、真人くんや凌稀くんがやるような激しいスポットは私にはまだできないところも多いんですが、小学6年のときに、昔DPクルーがやったことがあるスポットにトライさせてもらう機会があったんです。実際に自分もやってみることで、改めてDPクルーのすごさを実感しました。メイクするのにすごく時間がかかったし、何回もヤラれたので……。映像では観たことがあっても実際にスタート位置に立ってみると、想像とは全然違ったんです。そのときはなんとかメイクしたんですが、そのスポットで納得のいくスタイルを出せたフッテージは、今も残せていません。まだまだスキルが足りないと感じた撮影でした。

「滑りに自分の個性を出して、どんなときでもスタイルを貫けるライダーになりたいと思っています」

──22-23シーズンに開催されたNISSAN X-TRAIL e-4ORCE RAIL JAMでは、見事決勝進出を果たしました。国内のトップジバーが一堂に会したコンテストだったわけですが、どのような心持ちで挑んでいたのでしょうか。

とにかく自分のスタイルを出して印象に残る滑りをすることを考えていました。例えば、真ん中のダブルダウンやドンキーレールのセクションは男の人もみんな攻めていて、そこで私が今できる一番難しい技をメイクしたとしても勝てないと思っていました。自分が一番スタイルが出せるセクションは端のダウンレールだったので、そのセクションで、一番スタイルが出せる技を選んでトライしていた感じです。真ん中のセクションでは、みんなより難しくて派手な技は私にはできない。だからこそ、スタイル勝負に出て印象に残る滑りができるよう頑張りました。

──驚異的なメイク率が特に目立っていた決勝戦でしたが、いわゆる「持ち技」はどこからインスピレーションを受けて身につけているのでしょうか。

DPのみんながやっていた技や、海外のライダーがSNSに上げている技からインスピレーションを受けて、やってみたい!と思うものを練習しています。昔だと、まずは羽島で繰り返し練習して、パークで完璧にメイクできるように仕上げてから、なかでもそのシーズン中に映像に残したい技を選んで、その技はさらに練習する、という感じです。

──世界の女性スノーボードシーンを長きに渡り牽引してきたジェス・キムラのお眼鏡にかない出場することとなった、UNINVITED INVITATIONAL。現地ではどのように過ごしていましたか?

私がずっとSNSで見ていた憧れのライダーばかりが集まっていたので、自分の滑りを見てもらうチャンスだ!と思っていました。来ているライダーの中で一番カッコいいスタイルで滑って、映像を残すことを意識して滑っていましたね。

──UNINVITED INVITATIONALで様々なライダーとセッションを繰り広げたことで、どのような刺激を受けましたか?

例えばFSボードスライドひとつとっても、海外のライダーの滑りには個性がすごく出ていたり、同じセクションを滑っていても遊び方が全然違ったり……。こういうスノーボードの魅せ方もあるんだなと、すごく刺激をもらいました。ほかにも、私が技をメイクしたときにはジル(パーキンス)やいろいろなライダーたちが「今のヤバかったね!」と声をかけてくれて、すごく嬉しかったのも覚えています。JibGurl(ダニエル・パターソン)はずっと昔からSNSを通してライディングを見てきたライダーなんですが、3日目のコンテストが終わったあとに話しかけたらすごく優しく接してくれて。彼女がデザインしたキーホルダーをプレゼントしてくれて、いい思い出になりました!

 

 

──UNINVITED INVITATIONALに出場して、見えた課題はありますか?

自分の滑りにはインパクトが足りないと思いました。どれだけ難しい技を決めても、インパクトがなかったらジャッジしている人や周りの人の印象に残らないと感じたので、ジャンプやトランスファーも練習して、迫力ある滑りを目指していきたいです。とはいえたくさんのライダーがいる中で、私の滑りに「よかったよ!」と声をかけてくれる人や、私が滑るときにカメラを向けてくれるフィルマーの方がいてくれたことはすごく嬉しくて、自分のスタイルはここでも通用するんだと気づくことができて、それが自信に繋がりました!

──今後の目標を教えてください。

ジブだけじゃなくて、ジャンプやフリーライディングなどすべての面において、スタイルを認めてもらえるようなライダーになることです。一人ひとりが違う魅力を持っていて、滑りに自分の個性を出せることがスノーボードの魅力だと思うので、まったく同じ滑り方っていうのは存在しないと思います。特にストリートの撮影で、どんなときでも自分のスタイルを貫いて、誰が見ても「日葵の滑りだ」って言われるようなスノーボーダーになりたいと思っています。

 
 

おわりに

幼い頃から抱き続けている憧れのライダーたちとのセッションを通して、着実に進化を続けている日葵。若くしてDPの面々とセッションを繰り返しているからだろうか。15歳とは思えない、スタイルに対する燃え上がるような探究心が垣間見えたインタビューだった。コンペティションやビッグマウンテンフリースタイルといった、日本での注目度が高いシーンに比べると、同じフリースタイルスノーボーディングの中核を担う存在であるはずのストリートスノーボーディングに興味を持つ一般層は少ないのかもしれない。しかし、このシーンの中心でも確実に、彼女のようなこだわりを持ったライダーたちが活躍しており、今や国外からも注目を集めているわけだ。日本のこれからのストリートシーンを背負う日葵の今後の活躍から目を離さず、彼女の動向とともに、ストリートシーンを追いかけてみてはいかがだろうか。

 
 
高森日葵(たかもり・ひまり)
▷出身地: 愛知県一宮市
▷生年月日: 2008年1月18日
▷スポンサー: CAPITA、VOLCOM、UNION、DEELUXE、ELECTRIC、MOUNTAIN LIFE WAX、GOLGODA

text: Yuto Nishimura(HANGOUT COMPANY)

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