BACKSIDE (バックサイド)

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ストリートシーンにひと筋の光をもたらした「NISSAN X-TRAIL e-4ORCE RAIL JAM」

2023.04.07

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元来一枚の板に乗って雪上を自由に駆け巡る遊びだったスノーボードだが、ジャンル化が著しい日本のシーン。各ライディングカテゴリーが独自に進化を続けた結果、特に競技スノーボードはスポーティな側面が目立つようになっている。数々の日本人ライダーの輝かしい功績がキッズスノーボーダーに憧れを抱かせ、スノーボードシーンを支えているのは間違いない。しかし、バックカントリーとともにフリースタイルスノーボーディングの双璧を成す「ストリートスノーボーディング」に対する日本人スノーボーダーの理解は乏しく、注目度が低いという事実を否定することはできない。

その歴史は、90年代初頭に巻き起こったニュースクールムーブメント以前に、アメリカ西海岸のスケーターたちが雪上へ繰り出し、スケートボードのトリックをゲレンデで再現しようとし始めたところから始まる。結果生まれたのが現在のフリースタイルスノーボーディングであり、90年代後半には当時パーク内のジブアイテムで繰り出されていたトリックたちを、ストリートスケートボーディングさながらに、今度は街中に点在するハンドレールでメイクしようと試みるライダーたちが現れた。FORUM 8のメンバーであるJPウォーカーやジェレミー・ジョーンズらを中心に開拓されたストリートスノーボーディングというシーンは、数々のMACK DAWG PRODUCTIONS作品によって届けられ、当時のスノーボーダーたちに大きな影響を与えることに──。

特に最近の若い読者諸君の目には、ストリートスノーボーディングの世界は遠く、現実味のないものに映っているかもしれない。日本では欧米に比べるとストリートカルチャー自体が浸透していないこともあり、同じくフリースタイルシーンの最前線を走るビッグマウンテンフリースタイルに比べて、注目を浴びることが少ないのが現状だ。しかし、ストリートシーンがフリースタイルスノーボーディングの中核を担うひとつの要素であることは、当時を知る者にとっては疑う余地がない。

「UZUMAKI」の開催で昨シーズン、一躍フリースタイルシーンからの注目を浴びた群馬・パルコール嬬恋リゾートで、さる2月18日に開催されたジブコンテスト「NISSAN X-TRAIL e-4ORCE RAIL JAM」。その開催は結果的に、アンダーグラウンドで自身を表現するストリートライダーたちにスポットライトを当て、ストリートシーンを照らすひと筋の光となった。

 

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シーンの最前線で活躍するライダーたちが一堂に会した

 

日本のストリートシーン最前線をひた走るムービークルーといえば、小川凌稀や戸田真人を中心に、若手も含むトップジバーを数多く束ねるDIRTY PIMP。ディレクターを務め、ストリートシーンに精通する“DP”こと平上裕太郎は現在のストリートシーンについて、次のようにコメントを残した。

「いい意味で、ストリートをやっているライダーたちは昔から何も変わらないんです。滑れる期間が3、4ヶ月間しかない中で、みんなフルパートを作るためにヤバいカットを残し続ける……。ただ時代は変わっていて、今はスノーボードムービーはビデオじゃなくて、SNSで簡単に観られるようになっていますよね。簡単に観られるはずなのに、そんな中でも特にストリートシーンは露出が少ないと感じています。SNS上に情報が多すぎるから、どれだけ滑りのセンスがよくても、自己ブランディングができていないと観てもらえない。ヤバいムービーを作っても、すぐ流れていってしまう。オレたちのSNSアカウントは海外のフォロワーの方が多いので、日本人は特にストリートを観ないんだな、って感じています」

2011〜15年には日本でも東京・六本木ヒルズアリーナにて「BURTON RAIL DAYS」という世界最大級のジブコンテストが開催されており、世界トップクラスのジバーたちの滑りを目の当たりにすることができた。今ではそのような機会も失われ、ストリートで人目を忍んで撮影を繰り返す、彼らの情熱あふれる滑りを体感できる機会は少ない。さらに、近年では相次ぐ室内ゲレンデの閉鎖なども重なり、ストリートスノーボーディングの礎となっているジブシーンがより遠いものに感じられてしまう。

「だからこそ、ストリートを知らないスノーボーダーたちにも、もっと言えばスノーボードしない人たちにも届くような形で、ヤバさを伝えられる試写会とかイベントとか、アナログな場が大事になってくるんだと思います。そういう目線で見ると、今回のX-TRAIL RAIL JAMはひさびさに、みんながストリートを知るキッカケになり得るようなイベントだったんじゃないですかね」

DPがこう語るとおり、歴史ある「X-TRAIL JAM」の看板を掲げていたこのジブコンテストはさまざまな世代のスノーボーダーに、ストリートに興じるライダーたちの生き様を見せつけたのだ。

 

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ストリートシーンの未来を照らすイベントは大勢の観客で賑わった

 

この日のために用意された特設会場はゲレンデのコース内ではなく、パルコールの敷地内にある人が通るための階段に合わせて設置されており、中央部のダブルダウンレールは階段を上り下りするときに人々が手を添えるための、本物のハンドレール。そこに出場ライダーがそれぞれクリエティビティを発揮した滑りができるようにアイテムが加えられた、複合的なコースレイアウトになっていた。

 

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写真右からダウンレール、ハンドレールをそのまま使ったダブルダウンレール、そして上部左のドンキーレールからのトランスファーを促すかのように設置されたダウンレールとボックス。複合的ゆえに、ライダーたちのクリエイティビティが問われるレイアウトだ

 

こちらの特設会場で行われた決勝は夕方からのスタート。午前中はゲレンデ内の24パークにて、下剋上を狙う50人による一般予選が行われた。運営サイドによると、当初は予選から特設会場で行うプランも存在したらしいが、あまりの難易度に断念したそう。一般予選に出場したスノーボーダーたちはみな、本イベントの目玉であるストリートコースで自らの存在を誇示すべく、フルスロットルの滑りでジャッジにアピールしていた。

 

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一般予選からスーパーファイナルまで勝ち進んだ松岡秀樹(上)と堀池颯太(下)。このイベントの中に成長を続けた

 

予選を突破しないと滑ることが許されない特設コース。決勝前に行われた公開練習では序盤に大クラッシュが続出し、この時点で板がまっぷたつに折れるライダーもいた。特に鬼門だったのはやはり、コスることを考慮せず作られていたダブルダウンだろう。キンク部分での衝撃吸収が、このストリートコース攻略のカギを握っているた印象を受けた。

 

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本イベントのジャッジを務めた関功、野上大介、中村貴之(左から順)

 

公開練習を見守っていたジャッジの功は、「ストリートより危ないかもしれないですね(笑)」とこぼしていたものの、ストリートでのライディング経験が豊富なライダーたちのフィールドへの適応力は頭抜けており、公開練習終盤にはクラッシュも目に見えて減っていた。メイクの回数が上がるにつれて会場のボルテージも上がり、続けて始まった本戦Aヒートでは赤田佑弥が下部ダウンレールにて、ドンキーレールからのトランスファーBSリップスライドをメイク。新進気鋭の長澤颯人も十八番トリック、スイッチFSボードスライドで存在感をアピールしていた。
 
Bヒートでは高いメイク率を誇った戸田真人と高森日葵のテクニカルなライディングが目立っており、また、玉村隆が繰り出した特大トランスファーはまさに、ストリートスノーボーディングと呼ぶにふさわしいものだった。画を残すためにトライしているかのように、上部のリップから飛び出し、下部ダウンレールへのトランスファーにこだわり続けていたのだ。その衝撃をものともせずに下部ダウンレールをFSボードスライドで抜き切ったものの、ジャッジ時間外となった最終滑走でのメイクであったため記録には残らなかった。しかし、観ていた全員の記憶に残る結果となったことだろう。

 

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高難度セクションを優雅に攻略する赤田佑弥

 

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玉村隆の特大トランスファー。メイク後、仲間が駆け寄り彼の健闘を讃えるシーンが印象的だった

 

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激戦となった本戦を勝ち抜き、スーパーファイナルへ駒を進めたライダーたち

 

スモークとライティングに彩られ始まったスーパーファイナルでは、すでにリップスライドや270オンなど高難度トリックの応酬となっていた本戦各ヒートより、さらに繰り出されるトリックのレベルが上昇。ライダーたちの個性がぶつかり合い、ストリートスノーボーディングの魅力がスパークした30分間となった。

この男が滑ると常に会場が盛り上がる、と言っても過言でないほど、終始クリエイティブなラインで攻め続けた相澤亮。序盤にメイクしていたダブルダウンを飛び越えてダウンレールで繰り出したトランスファーBSボードスライドや、上部セクション、それもキックが用意されていないフラット部分からフルオーリーで飛び出して下部ボックス横の荒れた雪面にBS360をストンプし、そのままの勢いでコースとオーディエンスを仕切っていたウォールでのクリップラー、下部ボックスへの着地となるトランスファーFS360など、特設コース全体を使い切ったライディングを魅せた。弊誌編集長であり本イベントのジャッジを務めた野上大介は、「与えられたセクションに対して一番自由にフリースタイルを表現していたのは、間違いなく亮でした。縦横無尽にラインを刻んで、フリースタイルスノーボーディングの可能性を示してくれましたね」と語った。

 

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挨拶がわりに亮が、ドンキーレール付近から巨大トランスファーで繰り出したBSボードスライド

 

公開練習中にドンキーからのトランスファーをメイクしていた長谷川篤は、同じ高難度セクションにてFS50-50 to トランスファーFS270オンをクリーンメイク。一連の流れを踏まえると着地後にドライブしてしまうこと必至なアクションながらも、完全に抑え込んだ職人技に観客からも大きな歓声が上がった。このトリックで見事ベストトリック賞に選ばれた長谷川は、彼独自のこだわりを持って本イベントに臨んでいたと言う。

「ダブルダウンは階段側から入る技だけにしようと決めていました。レギュラーのフロントサイド側からは入らない。もしストリートでやるんだったら階段がない側からレールに入ることってあまりないから。そこは自分的にしっくりこないことなので意識していましたね。あとはコースの作り的に、メインセクションになっていたのはドンキーとダウンレールの部分なのかなって思っていて、やるならあそこだな、とは大会前から考えていました。タイトなセクションだったので、上部のドンキーにオンした瞬間の体の乗り具合で狙った技がメイクできるかできないかが決まるような感じで……。上手くダウンレール側に身体を残してドンキーを攻略できるかが、トランスファーでの270オンを決めるうえでのポイントだったかな、と思います」

 

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Bヒートにて長谷川が繰り出した、ドンキーからのトランスファーBSボードスライド・フェイキーアウト

 

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こだわり抜いたトリックチョイスで見事、ベストトリック賞に選ばれた長谷川

 

難易度の高いセクションでその技術力を光らせていたDPクルーの若手、鈴木冬生は自身9本目のランでハーフCABオン50-50 to トランスファーFSボードスライドをメイク。序盤にダブルダウンのキンク部分でライダーズライトに弾かれたことをキッカケに、階段を挟んで1.5mほど離れたダウンレールへのトランスファーをメイクする糸口を掴んだという。続けざまにダブルダウンで披露した、ハーフCABオン50-50からのノーズスライド・プレッツェル270オフも完璧にメイク。本イベントのベストインプレッションライダー賞に選ばれた。自身の納得するライディングを追求し、ジャッジ時間外まで滑り続けた冬生へ盛大な拍手が送られ、スーパーファイナルは終演を迎えたのだった。

「公開練習の数本目で板を折ってしまって。本当にダメかと思ったんですけど、奇跡的に一枚、板をいただけて……。そこからスイッチがバチンと入った感じで調子が上がっていきましたね。スーパーファイナルでやりたい技を本戦で練習する感じで滑っていたんですけど、ハーフCABオンからのプレッツェルは予選でいい感じに掴めたのでよかったかな、と思います。最初は(特設)コースを見てけっこうエグいな、と思っていたんですけど、周りがいい技を決めるとオレもテンションが上がってきて。順調に攻めきれて、何より楽しかったです!」

 

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スーパーファイナル終盤、立て続けに2本メイクした冬生

 

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後日行ったインタビューの際に「この優勝でさらに気合いが入りました。今年はチャンスだなって。名前が広がってみんなが見てくれる機会が多くなったからこそ、もっとやらなきゃ!と思っています」と、頼もしく答えてくれた

 

こうして、ストリートスノーボーディングの魅力を広く世に知らしめたX-TRAIL RAIL JAMは幕を閉じた。この場で己を最後まで表現し続けたすべてのアーティストたちへ、敬意を表したい。本イベントを通してストリートシーンを垣間見た読者諸君、これからの彼らの活躍に、ぜひとも注目してみてはいかがだろうか。心を燃やして路上で格闘する彼らの生き様は、必ずやあなたのフリースタイルマインドに火をつけてくれるから。

text: Yuto Nishimura(HANGOUT COMPANY)
photos: ZIZO=KAZU

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