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【連載Vol.3】「つがいけマウンテンリゾート」が誇るクリエイティビティを刺激するスノーパーク
2023.03.20
全3回連載の最終回となる今回は、高校生ライダー・柿本優空が魅せるTG PARKSでのクリエイティブなライディングとともに、栂池をフリースタイルに楽しむコツをご紹介。第1回目で掘り下げた「TSUGA POW」を堪能できる非圧雪エリア「TSUGA POW DBD」と併せて、このTG PARKSがフリースタイラーの心を掴んで離さない。栂池をオールラウンド・スノーリゾートたらしめる、最後のピースに迫る。
フルスペックスノーパーク「TG PARKS」とは
岡本圭司率いるHYWODがプロデュースするスノーパークテクノロジー「THE PARKS」。彼らが手がけるスノーパークのひとつが、栂池のハンの木ゲレンデ下部に位置する「TG PARKS」である。フルスペックスノーパークと謳うのも頷けるような、初級者から上級者まで楽しめるように工夫されたパークレイアウトがその特徴。パーク入り口ではボックスやフラットレール、カーブレールなどが設置されているジブレーンと、4連ウェーブのどちらか選んで入ることができ、その先は難易度と遊び方が異なるふたつのコースに分かれる。
まず、ウェーブを越えた先のライダーズライトに広がるのは、初中級者向けの沢コース。こちらは比較的優しめのアイテムが並んでいるものの、ナチュラルな地形を活かして3Dにうねるようにアイテムが配置された地形エリアやレギュラーのフロントサイドバンク、法面まで整備されたテーブルトップキッカーなど、スノーボーダーのクリエイティビティを刺激するレイアウトとなっている。後方確認は忘れずに、お気に入りのヒットを繋げられるラインを自由に描こう。
パークの入り口からジブレーンを抜けた森の中に広がるのが、例年10mオーバーのキッカーが2、3個設置されている中上級者向けの尾根コース。今シーズンのレイアウトではステップダウンキッカーがふたつ連なっており、見た目のサイズ感以上に浮遊感を味わうことができる。バックカントリーの撮影でもスタイルあるエアを披露する優空は、このコースの雰囲気が好きで練習に訪れるそうだ。
「森と森に挟まれているので落ち着いた雰囲気で、スタート前に1回、息を整えることができるんです。だから、気持ちを落ち着かせて練習したいときは栂池に来ることが多いですね。道場みたい、って思っています(笑)。アプローチが長いから、板が走らないコンディションでも自分でスピード調整がしやすいところも気に入っています」
ここまで初級者から上級者まで楽しめるTG PARKSの巧みなレイアウトについて説明してきたが、フリースタイルマインド溢れる読者諸君はTG PARKSで腕試しをしたくなったことだろう。しかし、栂池の本領が発揮されるのはここから。「パークだけじゃないのが栂池」と優空も語ってくれた、その秘密はTG PARKSが位置するハンの木ゲレンデに隠されていた。
栂池でフリースタイルを100%楽しむためには
TG PARKSにはパークだけを回すことができるリフトは存在せず、遊ぶためにはハンの木ゲレンデの下部から上部までを繋ぐ、ハンの木第3クワッドリフトに乗車する必要がある。リフト降り場からパーク入り口まで距離があるのだが、このTG PARKSに向かうまでのコースが面白いのだ。
「斜度のあるグルーミングバーンなので、特に朝イチはカービングターンが気持ちいいです。午後からは荒れてボコボコになってくるので、コースからちょっと横に入って森の中でツリーランを楽しんでから、コースに戻ってきてパークに入る流れが好きですね。例えばパウダーが降った日とかは、リフト降り場からパークまでパウターンを楽しんでから、パークに入って遊ぶこともできます」
このハンの木ゲレンデだけで滑走距離は3,000mを超え、その幅広いコースは斜度変化に富んでいるため、滑りごたえは抜群。ボードコントロール術を体得することができ、ジブアイテム上やエアで繰り出すトリック中の身体の動きなど、パーク滑走で必要になるスキルやトリックをつなげるために不可欠なカービングターンを、このハンの木ゲレンデでのフリーライディングで身につけることができるのだ。また、パーク専用のリフトが架かっているとそうはいかないが、土日でもあまり“ドロップイン待ち”の列ができないのも、このゲレンデレイアウトのおかげである。
シーズン終盤になると、TG PARKSはゲレンデ上部に位置する栂の森ゲレンデ内、ハンの木高速ペアリフト沿いへとその場所を移す。やわらかい春雪コンディションで攻めやすくなっている今は、自分の限界を押し上げるチャンス。こちらに移った後はハンの木高速ペアリフトにてパークのみを回すことができるため、栂池ではフリースタイルスノーボーディングをシーズン終盤まで楽しみきることができるのだ。
本連載第1回目にて紹介した、ヒットポイントが無数に存在する非圧雪エリア「TSUGA POW DBD」と、今回紹介したフルスペックスノーパーク「TG PARKS」、また、その周りを取り囲むゲレンデ内での遊びの幅。これだけ揃った栂池で滑りこめば、フリースタイルスノーボーディングが上達すること間違いなしである。一枚の板に乗って雪上を自由に楽しむスノーボードを愛する者なら、来る者を拒まない懐の広さこそが、「つがいけマウンテンリゾート」をオールラウンド・スノーリゾートたらしめる理由なのである。
text: Yuto Nishimura(HANGOUT COMPANY)
photos: HOLY