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レジェンドが惚れ込んだ山「スキージャム勝山」を久保田空也が攻める【前編: 西日本最上級パウダー】
2023.03.06
西日本に位置するゲレンデの中では最大、かつ最長の滑走距離を誇る福井・スキージャム勝山(ジャム勝)。同県内にある1988年オープンの老舗プロショップ・エスペランサ福井で空也はライダーを務めており、そこを出入りするスノーボーダーにとっては馴染み深いゲレンデである。しかし、ライダーとして国内外の各地を転々としてきた空也は、意外にもまだジャム勝の魅力を知らないという。エスペランサの代表、島田尚久氏から直接その価値を聞いた空也がジャム勝を来訪。西日本に位置するとは思えないほどのコースバリエーションを楽しみ尽くしたその様子を、本連載でお届けする。
ジャム勝パウダーを楽しむための朝イチルーティン
2月某日、空也はエスペランサ福井を訪れた。幼い頃大会に出場するために訪れて以来、15年ぶりとなるジャム勝の情報を、ローカルである島田氏に聞くためだ。
ジャム勝には水分の多い湿った雪が多く降り、その雪が多様なコースバリエーションを支えている。湿った雪は地形へのつきがよく、積雪量が増えやすい傾向にあるのだ。法恩寺山のピークに位置するイリュージョンサイトでの積雪量は、4~6mにも上るという。普段はしっとりしたクリーミーな雪が特徴ではあるものの、気温次第でサラサラのパウダーを味わうチャンスもシーズン中には訪れる。この日は空也のひさしぶりの来訪を歓迎するかのように、たっぷりのドライスノーを楽しめるコンディションが整っていた。トップの気温は-9°、ジャム勝が誇る豊富なコースバリエーションを隅から隅まで味わうチャンスだ。
島田氏によるとパウダーが期待できる日には、ハジパウ狙いでコース全長の長いイリュージョンAコースか、非圧雪のエクストリームコースがオススメとのこと。ベストコンディションを“アテた”空也ははやる気持ちを抑えきれず、急斜面にパウダーがたっぷりと積もったエクストリームコースへいの一番にドロップしていった。
ジャム勝最大斜度でのパウダーライディングを楽しんだ後は、ツリーランエリアへ移動。こちらは滑走者の安全のため、毎日パトロールがコース状況を確認し、10時頃にオープン可能かどうかの判断が下されるとのこと。イリュージョンA、エクストリームのどちらかで朝イチパウダーを楽しみながら、ツリーランAのオープンを待とう。
魅惑のツリーランエリアを徹底攻略
西日本では珍しく、管理区域内でツリーランエリアを設けているジャム勝。なかでもツリーランAコースは、1日で50cmを超える降雪を記録することもあるジャム勝の豪雪を楽しみながら、ツリーランへのチャレンジができるコースとなっている。アクセスがよく木々の間隔も広いので、ゲレンデクルージングからツリーランへのステップアップにはバッチリ。朝イチパウダーを楽しむのに最適なイリュージョンAコースとは同じリフトでアクセスが可能なため、イリュージョンA→コースオープン次第ツリーランAへ向かう、というルーティンでパウダーハントを楽しもう。この日のツリーランA内は30~40cmの新雪が降り積もっており、オープンするや否や、パウダーフリークたちがこぞってドロップインしていった。なお、こちらのコースは通常ヘルメット着用の義務があるため、西日本が誇るパウダースノーを心ゆくまで味わいたい方は、ヘルメットの準備をお忘れなく(今回は特別な許可を得てヘルメットを着けずに撮影しています)。
またコース内はヒットポイントまでの見通しがよく、ラインを繋ぎやすい。空也も「特に上部の方はそこまでタイトな感じではなかった」と後に語っていた。どのポイントを選び、どの遊び方で自らを表現するのか、スノーボーダーそれぞれのスタイルが顕著に出るエリアである。
かつてBURTONのライダーとしてフリースタイルの第一線で活躍し、今ではレジェンドとして知られるデイブ・ダウニングが2019年の冬にジャム勝を訪れた際には、そのツリーエリアにひとめ惚れしてしまい、リゾート側にツリーランエリアとしての開放を提案した(今のツリーランBコース、現在は積雪量不足のためクローズ)、というエピソードもあるジャム勝。世界中の山を知り尽くしたレジェンドも認めるポテンシャルを秘めたツリーランを味わう空也の顔からは、終始笑みがこぼれていた。
あくまで管理区域内のコースなので、通常コースへの復帰も容易。複雑なトラバースや面倒なハイクアップは挟まずに、沢沿いに下りていけばイリュージョンサイト下部に戻ることができるのだ。
パウダーハントを大満足のうちに終えた空也が次に狙ったのは、特にスノーボーダーに人気というファンタジーサイト側のコース。こちらは豊富な地形とコース幅の広さが特徴で、地形遊びやカービングにもってこいのエリアとなっている。後半では空也と島田氏が披露した美しいタンデムライドとともに、パウダーだけでは収まらないジャム勝の魅力をお届けする。乞うご期待!
text: Yuto Nishimura(HANGOUT COMPANY)
photos: HOLY