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平野流佳が戸塚優斗や平野歩夢らを抑えて優勝。冨田せな2位。W杯パイプ開幕戦詳報
2021.12.12
これまでは層の厚い日本ハーフパイプチームの中で2、3番手につけていた平野流佳が躍動した。米コロラド州カッパーマウンテンで開催されたW杯ハーフパイプ開幕戦で優勝を飾ったのだ。
男子は予選から平野歩夢、戸塚優斗、流佳、片山來夢の順で1~4位につけて決勝へ駒を進めていた。ひとり3本のランを行いベストポイントで争われるお馴染みのルール。流佳は結果的に1本目のランで勝負を決めた。
スイッチスタンスでドロップインするとファーストヒットでスイッチBSダブルコーク1080を決め、2ヒット目以降はBSダブルコーク1260→FSダブルコーク1080→CABダブルコーク1080→FSダブルコーク1260というルーティンを完璧に成功させて89.25ポイントをマーク。2、3本目はさらなる高難度ルーティンに挑もうとするも失敗に終わり、この1本目のポイントのまま逃げ切った。
筆者はJ SPORTSの生番組の解説を務めさせていただいていたので、大会直後の流佳と言葉を交わす機会に恵まれた。力みのないいい表情をしているのが印象的だった。現地の公式インタビューでは最後に、「北京五輪では優勝できるように頑張ります」と言い切っていた。優斗や歩夢ら世界のトップライダーが出場している大会で頂点に立てたことは自信につながると番組内で語ってくれただけに、大きな弾みになったことだろう。
流佳の同級生であり同ブランドに所属するチームメイトであり、2020年3月に行われたBURTON US OPENから出場した主要大会で6連勝と無敵を誇っていた戸塚優斗は3位に甘んじた。表彰式では悔しさがにじみ出ていた。
1本目は2ヒット目のCABダブルコーク1260で珍しく転倒すると、2本目のランではFSダブルコーク1440→CABダブルコーク1260→スイッチBSダブルコーク1080→BS900→FSダブルコーク1260を決めて87.75ポイントと流佳のポイントに1.5ポイント及ばず。CABダブルコーク1260の着地後に減速してしまったのか、スイッチBSダブルコーク1080の縦軸がいつもよりも浅く、高さも物足りないように感じた。昨年の全盛期であれば4ヒット目にBSダブルコーク1260を組み込んできていただけに、そういうことだったのかもしれない。
3本目はCABダブルコーク1260の着地に嫌われて万事休す。王者の連勝がストップした瞬間となった。
今年8月までスケートボードに向き合っていた歩夢だが、先述したとおり予選を1位通過していた。そのルーティンは、FSダブルコーク1440→CABダブルコーク1440→FSダブルコーク1260→BS900→FSダブルコーク1080で95ポイント超を記録。ハーフパイプの状況はパーフェクトとは言えない状況にもかかわらず、ブランクをまったく感じさせない仕上がりと言える。
決勝では1本目にファーストヒットのFSダブルコーク1440で転倒してしまい、2本目。2ヒット目をCABダブルコーク1080に修正し、予選よりも少し難度を下げたランは87.25ポイントだった。流佳に2ポイント差で挑んだ3本目は当然、予選同様にバック・トゥ・バックのダブルコーク1440で勝負に挑むも、CABダブルコーク1440の回転が若干余ってしまい、転倒こそなかったものの進行方向に詰まるような格好で着地して大きく減速。4年ぶりとなるW杯復帰戦は4位でフィニッシュとなった。
27歳を迎え、長きに渡りファイナリストとして君臨しているヤン・シェラー(スイス)が2位に。特大のBS900から、FSダブルコーク1440→CABダブルコーク1080→FSダブルコーク1260→FSアーリーウープ540と、全体的に高さと迫力あるルーティンをメイクして88.5ポイントを叩き出した。優斗と歩夢を押し出すようにして表彰台を射止めたのだ。
もうひとりの日本人ファイナリスト、片山來夢は1本目から80点台と順調に滑り出したかに思えたが、2本目でさらなる高ポイントを狙い、巨大なFS1080から2ヒット目にCABダブルコーク1440を繰り出すと、頭部をリップに強打しながら転倒して全身ボトムに叩きつけられた。大事に至らないことを願いたいが、ここで欠場となってしまった。
テイラー・ゴールド(アメリカ)が得点狙いではなくスタイルを誇示するためにファーストヒットにマックツイストを繰り出すことは有名だが、1本目でまさかの転倒。回転数としては少なく、エアターン同様に失敗するケースは少ないだけに違和感を覚えていた。そのうえで優斗は1、3本目でCABダブルコーク1260を、歩夢は1本目にFSダブルコーク1440をそれぞれ失敗していた。これらはすべてレギュラースタンスのバックサイドウォールでの話である。
大会直後に流佳に話を聞くと、予選ではバーチカルが立ち気味(垂直部分が長くなっている状態)だったのに対し、決勝当日は若干開いている(垂直部分がハーフパイプのやや外側へ向いている状態)と教えてくれた。だからか、リップに乗り上げるように激しく転倒するライダーたちが続出していた。
国際放送の映像を見ているかぎり、リップは波打っているように映った。高難度化が叫ばれ続ける昨今のハーフパイプ競技だけに、パーフェクトに近いシェイプを用意していないと万全とは言えない。そうでないと、今回の來夢のような事態は避けられないからだ。
女子は冨田せな、小野光希、松本遥奈の3名がファイナル進出を果たしていた。せなは1本目に、ファーストヒットでFS540にステイルフィッシュを加えながら最後の180をレイト気味に返すオシャレなスピンから入ると、BS540→FS720→CAB720→FS900を完璧に決めた。教科書どおりの美しい滑りにエアの高さが加味されて76ポイント。残す2本はラストヒットでFS1080を狙うも決めることはできなかった。
優勝したのは、FSエア・トゥ・フェイキーからCAB900の完成度にこだわり続けて3本目で見事に決めたツァイ・シュートン(中国)が、3位には予選を1位通過していたケラルト・カステリェト(スペイン)が入った。
最後になるが、トリノ、バンクーバー、平昌とオリンピック3大会で金メダルを獲得しているスーパースター、ショーン・ホワイトは北京五輪出場を目指すと表明しており、アメリカ代表の座を勝ち取るために参戦。全盛期のトリックを繰り出すことはなく、8位に終わった。今大会はUS GRAND PRIXとの併催のため、アメリカ代表を決めるうえで重要な一戦だったのだが、先述のテイラー、チェイス・ジョージーに続く3番手の順位で初戦は幕を下ろした。
男子結果
1位 平野流佳(日本)
2位 ヤン・シェラー(スイス)
3位 戸塚優斗(日本)
4位 平野歩夢(日本)
7位 片山來夢(日本)
14位 平野海祝(日本)
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女子結果
1位 ツァイ・シュートン(中国)
2位 冨田せな(日本)
3位 ケラルト・カステリェト(スペイン)
5位 小野光希(日本)
7位 松本遥奈(日本)
11位 今井胡桃(日本)
12位 鍛冶茉音(日本)
27位 冨田るき(日本)
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photos: FIS SNOWBOARDING