COLLABORATE BRANDS
世界の頂を極めた男を知り尽くす工藤洸平が手掛けるNOMADIK「777 KAZU」
2021.12.07
2021年1月、國母和宏(以下カズ)の電撃移籍が発表されるとスノーボード業界に激震が走った。大手スポーツブランドから、親友の工藤洸平がディレクターを務めるNOMADIKへ。いくつかのウエアブランドから声をかけられたが、それらを蹴って出した答えだった。
カズ自らが製作に携わり新境地を開拓
カズ自らが製作に携わり新境地を開拓
そのうえで“作ってもらう”のではなく、カズ自らが能動的に製作に取り組んだ。洸平が「めっちゃ勉強になる」と言うほど作りたいものを明確に提示し、完成に至るまでこだわりにこだわり抜く。映像制作でもそうだ。世界有数のトップライダーたちを束ねて制作したシグネチャー作品『KAMIKAZU』の監督を務めた際も、日本のトップクラスを集めたSTONPの映像作品でも妥協は一切しなかった。アウターウエアやアパレルづくりに精を出すカズについて、洸平は次のように話す。
「毎週カズがうちに来て打ち合わせをしていました。カズのこだわりはかなり強いので難しかったですね。1、2cmの違いで丈の感じがだいぶ変わってくるから、サンプルを出して調整してを繰り返して。ポケットの位置やロゴの配置、ボタンの色などすべてを聞いて、それをオレが型に起こしました。カズは感覚をものすごく大切にしているから、微妙な色の差にまでこだわる。そのニュアンスを理解して再現するのが大変でした。そして、納得いくところまで落とし込めないと絶対にリリースしない」
素材によっては色見本帳と異なる仕上がりになるケースも多々あり、サンプルを何度か出すも期日に間に合わずにドロップしてしまったケースもあったそうだ。しかし、頑ななまでにこだわりを追求する一方で、カズは柔軟性も兼ね備えている。ベージュをイメージして生地を作ったところ、色が転んでクリームカラーで仕上がってきた。「このクリームいいんじゃね?」とカズが太鼓判を押すと、洸平を含めたチームライダーたちも気に入り、ブランドストーリーに綴っているとおりバラバラの個性で作られた3モデルにこのクリームは共通して採用されている。
「作りたいものを作る、着たいものを作ることにこだわりました。シャツとかパンツの古着を探して着るのが好きなんですけど、それらのシルエットをもとに作った感じですね。オレの777シリーズはNOMADIKのメインのラインではなくイメージを作るひとつのラインだと思っていて、だからこそ数字を追うようなことはしないで自分の好きなものを作ることだけに集中しました。洸平はライダー側とブランド側の両方を理解しているから、すごくスムースにいきましたね。洸平の意見も聞き入れやすかった。ほかのメーカーにないカラーを探るようなことも一切なくて、自分が着たいと思う色で作りました」
信頼関係の賜物である「777 KAZU」シリーズ
信頼関係の賜物である「777 KAZU」シリーズ
ボードやゴーグルなど数々のシグネチャープロダクトを世に放ってきたカズだが、看板ライダーとしてだけでなく、NOMADIKの“中の人”としてものづくりに熱中している。すでにソールドアウトしたが、カズが手掛けた財布「777 KAZU WALLET」には愛犬を彫刻したボタンが使われている。目を凝らさないとわからないながら、耳のしわや目つきなど、かなり細かい部分にまで指示を出したようだ。幼少期から切磋琢磨してきた洸平との信頼関係があってこそ具現化できるのであり、だからこそものづくりが面白いのだ。
カズのこだわりを凝縮させたうえで、審美眼を持つ洸平のセンスにより「777 KAZU SNOW WEAR JKT」と「777 KAZU SNOW WEAR PNT」が生み出された。
「全体として90年代のシルエットをイメージしました。ジャケットは身幅広めで、丈は若干短めになっています。あとは、左の胸ポケットと両サイドのポケットとの間に切り替えしを入れているんですよ。色を変えているわけじゃないんですけど、さりげないオシャレとして。パンツはかなり太めでカーゴポケットをあしらっていて、裾はジョガータイプにしました。シルエットはオールドスクールなんですけど、そこにトレンドを取り入れた仕上がりになっています」
カズのリクエストに応えて、アーミー風のがっしりした保温性の高い生地を使用。3レイヤーを採用しており、耐水圧20,000mm、透湿性10,000g/㎡-24hとスペックも申し分ない。それでいて軽く、ストレッチが効いているため動きやすさも抜群だ。
「とにかくストレスなく着れる。性能の面で言えば、濡れない、蒸れないは最低条件だとして、あとは突っ張らないから動きやすいですね。ライダーは着るものがすごく大事だと思っていて、例えば、ヒップホップを聴いているヤツにフロントフリップやバックフリップをやられてもしっくりこないのと同じで、ライダーのイメージにあったトリックのチョイスもそうだし、もちろん、ウエアやブランドのチョイスもあると思う。だから今の自分は、すべて好きなものを身にまとい滑りで表現できています」
「ぶっちゃけ、カズのウエアの生地は高いんですよ」と洸平は笑うが、自分たちと同世代に着てほしいという想いを込めて、購入しやすい価格帯を意識した。カズの理想を洸平が具現化した、夢のコラボにより誕生したジャケット&パンツ。手にとって袖を通してほしい。きっと、彼らの想いが伝わってくるはずだから。