BACKSIDE (バックサイド)

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AyumuHirano
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COLUMN

ショーン・ホワイトVS平野歩夢の激闘。平昌五輪ハーフパイプ決勝を振り返る

2018.03.02

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OLYMPIC CHANNELにて平昌五輪ハーフパイプ男子ファイナルの全編が公開中。銅メダルに輝いたスコッティ・ジェームスの1本目は24分42秒から、銀メダルを獲得した平野歩夢の2本目は59分26秒から、トリノ、バンクーバーに続いて3度目のオリンピック金メダリストとなったショーン・ホワイトの3本目は1時間35分5秒からとなっている。
見どころとしては、スコッティの多彩なグラブバリエーションによるスタイルと難易度を両立させた滑り、歩夢のスノーボーダーとしてのポリシーを貫いた高さのあるバックサイドエアからの4連続高難度スピン、そして、高難度スピンを織り交ぜながらもショーンが叩き出したラン全体を通してのエアの高さが挙げられる。
スコッティは、フロントサイド・ダブルコーク1260(ステイルフィッシュ)→バックサイド・ダブルコーク1260(ミュート)→フロントサイド1080(ノーズ)→キャブ540(タイペン)→スイッチバックサイド・ダブルコーク1260(ミュート)で92ポイントを記録。タイペンとは、前手を前足の後ろ側から股の間を通してトウサイドをつかむグラブトリックのこと。キャブ540という回転数が少ないスピン時に強烈な個性を放っている。フロントサイド1080のノーズグラブも独創的だ。
歩夢は1ヒット目に群を抜くエアの高さを披露。なぜ1ヒット目にスピンを入れないのか?という意見をよく耳にしたが、もちろん回せないのではなく“あえて”回していない。それは、先述したように歩夢のスノーボーダーとしてのポリシーであり、パイプランにおけるエアトリックの美しさを最大限に表現するためにほかならない。そのうえで、続く4連続の超高難度スピントリックにつなげることで圧倒的に勝つことを目論んだのだ。
そのルーティンが圧倒的である理由は、金メダルを獲得したショーンでさえも成し得ない、連続ダブルコーク1440から連続ダブルコーク1260につなぐことができる滑走スキルの高さである。双方ともにフロントサイド・ダブルコーク1440からキャブ・ダブルコーク1440をバック・トゥ・バックで行うわけだが、後半のキャブ・ダブルコーク1440は歩夢が2017年3月のBURTON US OPENで、ショーンが2017年10月にニュージーランドでのトレーニング中に大ケガを負った技だ。そうした恐怖心と格闘しながら、両者ともにあらゆる葛藤を乗り越えて繰り出しているわけである。
その完成度が高いからこそ、歩夢はそのままフロントサイド・ダブルコーク1260→バックサイド・ダブルコーク1260を繰り出せるだけのスピードを維持できているということ。これは、高難度スピントリックすべての完成度が高いため、パイプの上部にあたるリップ付近に完璧に着地しているからこそ次のヒットにスピードをつなげることができている証だ。
それに対してショーンは、同じくキャブ・ダブルコーク1440の後にはフロントサイド540で体勢やスピードを立て直さないと、続くダブルマックツイスト→フロントサイド・ダブルコーク1260につなぐことができない。その証拠として、これまでのショーンは必ず1ヒット目にバックサイドエアを入れてきたことはスノーボードに精通している読者諸兄姉ならご存知のはず。事実、2017年12月のW杯カッパーマウンテン大会まではそうしたルーティンを組んでいた。だが、連続ダブルコーク1440と連続ダブルコーク1260がオリンピックの金メダル争いに必要になることがこの時点で読めていたことから、ルーティンを組み直したというわけだ。
こうして完成したショーンのベストルーティンが、フロントサイド・ダブルコーク1440(インディ)→キャブ・ダブルコーク1440(インディ)→フロントサイド540(ステイルフィッシュ)→ダブルマックツイスト(ミュート)→フロントサイド・ダブルコーク1260(ステイルフィッシュ)である。中盤で体勢を立て直しているため、後半になっても高さのあるエアを披露できる。ここが明暗を分けたようだ。
加えて、スピン中のグラブバリエーションを指摘する声もあがっていた。ダブルマックツイストとバックサイド・ダブルコーク1260の回転軸は異なるが回転方向や回転数は同じため、ともにミュートグラブがやりやすいという前提のもと両者の高難度トリック4つのグラブを比較してみると、歩夢のルーティンはバックサイドエア(メランコリー)→フロントサイド・ダブルコーク1440(インディ)→キャブ・ダブルコーク1440(インディ)→フロントサイド・ダブルコーク1260(インディ)→バックサイド・ダブルコーク1260(ミュート)だったため、ショーンのラストヒットはフロントサイドスピンでステイルフィッシュを入れていることからバリエーションは豊富だったという見解だ。
しかし周知のとおり、ショーンが2ヒット目に繰り出したキャブ・ダブルコーク1440はインディグラブではなくブーツグラブだったわけだが、それ以上に、エアの高さを評価したという結果だったのだろう。
こうしたことを踏まえ、地球史上最強レベルのハーフパイプ決戦となった平昌五輪を改めてご覧いただきたい。日本でもスノーボードに精通していない層にまで感動をもたらし、ハーフパイプ競技の魅力やカッコよさが十二分に届けられた。ショーン、歩夢、スコッティ、そして出場した全ライダーに敬意を表したい。
 
OLYMPIC CHANNEL(外部サイト)
MEN’S HALFPIPE FINALS – SNOWBOARD | PYEONGCHANG 2018 REPLAYS

https://www.olympicchannel.com/en/playback/snowboard-mens-halfpipe/

text: Daisuke Nogami(Editor in Chief)

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