BACKSIDE (バックサイド)

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REVIEW

乗り続けてわかったSTEP ONの真価

2019.03.11

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BURTONが満を持してリリースした新システム「STEP ON」を使いはじめてから2シーズン目に突入。発売前の2017年2月に初めて使用したフィーリングをもとに執筆したレビュー記事「BURTONの新システム『STEP ON』で滑ってみた」がSEO対策なしでGoogle検索の最上位(カタカナ「ステップオン」で検索の場合。2019年3月11日現在)に表示される異例の注目を集めるなか、“で、ぶっちゃけどうなの?”というご質問もちょうだいするわけなので、改めて筆を執ることに。約2シーズンに渡って乗り続けてわかった、STEP ONの真価とは?
※初年度はRULER STEP ON、2年目はION STEP ONモデルのブーツを着用

 

ProfilePhoto

本記事でテストライダーを務めるのは、弊誌「BACKSIDE SNOWBOARDING MAGAZINE」編集長・野上大介。若かりし頃、全日本スノーボード選手権大会にハーフパイプ種目で2度出場するも、成績はどちらも真ん中くらいという中途半端なライダー経験あり。2012年1月に左ヒザを粉砕骨折してしまい攻めた滑りはできなくなったが、フリースタイルスノーボーディングを再燃させることでシーンがさらに盛り上がることを信じて疑わない

 

実のところ不安だった1年目

今シーズンはSTEP ONバインディングを一度もボードから外していない。言い換えれば、昨シーズンは使い分けていたということになる。
 
ファーストインプレッションについての詳細は先述したレビュー記事をご一読いただきたいが、パウダーでは初回から違和感がゼロだったSTEP ON。雪面からの反応をダイレクトに感じられることからハードギアのテストとして最適なグルーミングバーンでの滑走時でも、ストラップ式とは異なるもののベースプレート内での“遊び”に近しいフィーリングを得ることができたためすんなりと馴染めた。その理由は、ターン時の加重・抜重はもちろん、パンピングやリカバリー時に必要となるストラップの伸縮性により提供される絶妙な動きを、高い再現性で実現していたからだ。
 
しかし、フリースタイルな動きになるとどうなのか? 7年前に左ヒザを粉砕骨折した後遺症から激しいアクションはできないものの、違和感の前に“不安感”が先走っており、昨シーズンはそのような状況下で滑る際はストラップ式バインディングに付け替え、通常のブーツに履き替えてライディングしていた。
 
2017年のX GAMES取材でアメリカ・コロラド州アスペンを訪れた際には角野友基と滑る機会があったため、その翌シーズンもあるかもしれないと欲張ったシチュエーションが頭をよぎるとストラップバインディングに付け替え、昨年3月に平野歩夢らが集結するスーパーパイプを完備したリゾートへ取材に向かうときも同様だった。仕事の合間のちょっとした時間も無駄にしたくない思いから、確実で安心なストラップ式バインディングを選択していたのだろう。
 
しかし昨秋、とあるライダーのひと言を耳にした瞬間、その不安感は一気に吹っ飛んだ。「どんなときでもこれ(STEP ON)しか使ってないよ」。いまだバックカントリーをフリースタイルに駆るベテランライダー、ウエこと植村能成だ。「ウエさんが問題ないのに、オレのしょぼい滑りで心配してるなんて……」と自分の考えを恥じ、今シーズンは一度もSTEP ONバインディングを外していないというわけだ。
 
ちなみに昨シーズン、念願だったノーフット状態からのステップオンには成功している。左ヒザをかばうようなカタチになってしまってはいるが、会心の一撃だった(数えられないほどチャレンジした結果だが)。

 
 

いろいろな斜面を滑ってみた体験談

雪不足に悩まされる今シーズンだが、年末年始はパウダーにありつけた。しかし、ライディングスキルが足りないのか、個人差があるのか……。積雪がヒザ程度のパウダーでは前出のレビュー記事のとおり違和感はゼロだったのだが、深くなればなるほど、トウサイドへの切り替えがやや遅いような気がする。オープンバーンではさほど気にはならないのだが、ツリーに入ったとき、瞬時の動きを求められる状況下で不安感を覚えた。
 
初めてSTEP ONを使用した際、低速でグルーミングバーンを滑ったときに反応が遅い、または鈍いと感じた違和感と共通するのかもしれない。低速時の不安定な状況と、ディープパウダー内を浮遊している状態が似ているかどうかはわからないが、これまでストラップに体重を預けるような乗り方をしていたためだろうか。はたまた、アンクルストラップをキツめに締めるタイプだったからか、こうした状況からトウサイドターンを始動させるキッカケづくりが難しく感じた。

しかし、人によってはカカト部でヒールクリート(ブーツの突起部)とヒールバックル(ハイバック内側下部)が接続しているため、むしろトウサイドへの反応が速いという意見もあるため一概には言えないのかもしれない。
 
ちなみにグルーミングバーンでスピードに乗っている状態であれば、ストラップ式と比較してまったく遜色なくカービングターンを楽しめる。僕の場合、トウサイドへの反応は速くも遅くも感じることはなく、これまでの四半世紀を超えるライディング経験に基づくフィーリングとほぼ変わらない。
 
今回はBURTON US OPENの取材で訪れたコロラド州ベイルで撮影を行った。ベイルと言えば内陸に位置し、山頂は3,527m、山麓でも2,454mあることからもわかるように、乾燥したドライスノーが特徴。雪質は最高級だ。ゆうに100超のコース数を誇る滑走面積は白馬八方尾根のおよそ14倍もあり、グルーミングされる面積は世界一なのだ。しかも、FIVE STAR GROOMING(五つ星の圧雪技術)と謳っているだけあり、そのクオリティは折り紙付き。
 
スピード計測をしたわけではないが、恐らくスノーボード人生における最高スピードは、このベイルの地で叩き出しているはず。そうした速度領域でもトウ/ヒールサイドともに安定したフィーリング、そして操作性をもたらしてくれた。
 

ToesideTurn

低速時やディープパウダーではトウサイドターンの始動が難しいと綴ったが、それ以外の状況下ではエッジ・トゥ・エッジの反応はとてもクイック

 
 

HeelsideTurn

雪質のよさ、グルーミングの上手さ、広大なオープンバーンという条件ももちろん重要だが、何よりも違和感のない足まわりのフィーリングが大切

 
さらに、改めて痛感させられるのがバインディング装着時間の短縮だ。取材の合間を縫ってライディングしていることから、よりそう感じられた。前述のレビュー記事にも綴っているのだが、BURTONが発表しているデータを再び紹介したい。
 
1回の装着に30秒かかると仮定したうえで、1日に15ラン、年間に20日滑走するスノーボードライフを10年間続けると、バインディングの装着に1,500分を費やしていることになる。1本のランを仮に5分だとすると、STEP ONに乗り換えることで300ラン分を得ることができるのだ。

初回のレビュー記事ではあながち間違っていないように感じたわけだが、今では躊躇なくそう断言できる。まだ2シーズン目だが、すでに何本分得しているのだろうか。
 
 

フリースタイルな動きに不可欠な“遊び”と“足裏感覚”

これまでのステップインシステムのイメージとして、バインディングの着脱が苦手な初心・初級者からの支持を得ていたように感じる。しかし、足の内側と外側を固定するタイプがほとんどで、ツマ先側とカカト側への加重・抜重を繰り返すスノーボードの動きと固定位置が矛盾していたため、中級者以上には受け入れられなかったように推測できる。
 
余談になるが中高年層が増加した現在では、バインディングを装着する際にとる腰を屈めた体勢がツラいという年輩スノーボーダーたちにも受け入れられることだろう。
 
また、STEP ONが登場する以前まで市場を独占していた製品については、ツマ先側とカカト側で固定するという点では同じだが、バインディングのベースプレートとブーツのソール部とで接続されているため、少ない力でも大きなパフォーマンスを発揮でき、レスポンスが速いことが特徴として挙げられる。こうしたことから、カービングターンやパウダーターンを重視している層から絶大なる支持を得ていた。装着スピードが速いわけだから、朝イチのパウダー争奪戦で有利であることは言うまでもない。
 
しかし、フリースタイルスノーボーディングにおいて足裏感覚はとても重要だ。これまで存在したステップインシステムのバインディング&ブーツの足裏には金具が干渉していたこともあり、フリースタイルシーンで受け入れられた実績はない。
 
さらに言えば、近年のライディングレベルを鑑みれば当然なのかもしれないが、コンペティターが使用しているシーンを見かけたこともない。だから、フリースタイルスノーボーディングには不向きなのでは? 少なからず、筆者も初年度はそう思っていた。
 
先述したように激しいアクションはできないためフリースタイル上級者には参考にならないかもしれないが、僭越ながらポイントとなる動きについて言及していきたい。
 
まずはオーリー時に必要となる斜め上方向へしゃくり上げる動作については、ツマ先寄りの側面とヒールカップよりも上部のカカト部が固定されており、冒頭で述べたようにベースプレート内に遊びがあるため問題なくこなすことができた。オーリーに必要な力を溜めることが、そのベースプレート内での遊びにより生み出せるからだ。
 
カカト部の接続位置が絶妙なことと、ブーツに搭載されたナチュラルファイバー製のレースであるNEW ENGLAND ROPESの効果もあるのだろう。この原稿を書きながらもブーツを履いてボードに固定されているSTEP ONバインディングを装着し、あらゆる方向に動いてみたのだが、お世辞抜きでナチュラルなフレックスを高次元で再現していることを痛感させられた。
 

MelonGrab

弊誌最新号「THE GRAB」で小西隆文が語っているようにダウン系のヒットポイントでは下半身を引きつける動作が難しいためグラブは浅かったが、STEP ONでのオーリーは問題なし

 
また、着地時やリカバリーが必要な場面でも同様の効果が得られるため違和感はない。ややフラットな着地面で衝撃を受ける格好でランディングしたのだが、カカト部などバインディングを固定している箇所で痛みを感じることはなかった。足裏感覚がストラップ式バインディング&ブーツの装着時と変わらないということは、フリースタイルスノーボーディングにとってかなり重要である。
 

Landing

スケーターやサーファーは常にフットポジションを変えながらバランスをとっているのだから、スノーボードに置き換えればベースプレート内での“遊び”がものすごく重要

 
そして、ポークして己のスタイルをカタチ作りたいと願うスノーボーダーにとっても、STEP ONは問題なくそのアクションをもたらしてくれる。ここまで来たら言うまでもないだろうが、カカト上部という計算された接続位置、そこから得られるストラップ式バインディングさながらのベースプレート内での遊び、さらに自由な足裏感覚があるからこそ実現可能なのだ。
 

SwitchLayback

ストラップバインディングよりもむしろポークできているような気がする。これには個人差があるのかもしれないが、ブーツを若干緩めに履いてもSTEP ONの場合は調子がよかったからか?

 
 
慣れさえすればSTEP ONの恩恵にあやかることはさほど難しくないが、それを使用するのに適した状況や、そうでない状況は少なからずある。
 
超ドライで底当たりするほど軽いディープパウダーでは経験していないが、水気を含んだパウダースノーの場合は足場を固めさえすれば装着は問題なくできた。しかし、仮に深いパウダーでノーズを捕られてしまい、ひっくり返った状態で転倒したと仮定する。バインディングを外すためにはレバーを引き上げてカカトを上げながら前方に踏み出すような動作が必要になるため、こうした体勢になってしまったら苦戦することは想像に難くないだろう。
 
反対に、トラバースが多い状況や緩斜面が長くて失速してしまうゲレンデなどでは重宝するだろうし、仲間や子供にライディングを教えるとき、はたまた友達同士で撮影するときなど、バインディングを着脱する回数が増えれば増えるほど、その恩恵にあやかれるはずだ。
 
そのうえで、一般レベルであればフリースタイルスノーボーディングは十二分に楽しめると断言しておこう。20m超のキッカーやハーフパイプでトリプルオーバーヘッドを飛んだわけではない(もともと飛べない)ので、そのあたりはどうかあしからず。

text: Daisuke Nogami photos: Akira Onozuka

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