BACKSIDE (バックサイド)

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Hiroshi Fujiwara

INTERVIEW

FREESTYLE FOR LIFESTYLE Vol.1 藤原ヒロシ ✕ 野上大介【後編】
「スノーボードはライフスタイル」

2019.07.26

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能動的かつ自由にラインを描き、独自性あふれるトリックを繰り出すライディングスタイルを通じて、スノーボーダーでありいち個人としてのライフスタイルが育まれていくのではないか。こうしたフリースタイルスノーボーディングの根幹をひも解くべく、スノーボーダーにして各界で活躍する有識者を招いた対談企画を用意した。ストリートファッション界のカリスマと称され、常に斬新な仕掛けを生み出してきた藤原ヒロシ氏との対談後編(前編の記事はこちら)をお届けする。

 
 

雪山は誰もが肩書きを忘れられる場所

 
DN: 以前お話したときに、ヒロシさんの言葉で印象的だったフレーズがあるんです。「雪山は肩書きを脱げる場所だ」って。
 
HF: そうですね。そこにいる全員がね。たまたま僕の周りがそういった人たちばかりなのかもしれないですけど、プロスノーボーダーの友達は誰も偉そうじゃないというか、本当に不思議といい感じで。かと言って、ローカル色が強いわけでもない。むしろ、どこでも連れて行ってくれる。こんな面白いところがあるから行こうよって。波乗りって、よそ者が来たから邪魔者扱いされるみたいな話を聞くじゃないですか?
 
DN: ローカル優先という文化は確かにサーフィンでは強いですね。
 
HF: そういったのがスノーボードではあまりない。例えば、年に1回しか会わなくても、まるで毎週会ってたかのような感じで話をしてくれるし、こちらも話ができる。その感じがすごいなって。そう接してくれることがありがたいし、うれしい。それに僕にとってスノーボードは、いつまでたってもルーキーというか……プロとの差は歴然とあるんで。
 

Hiroshi Fujiwara

 
DN: そういった意味で、藤原ヒロシという肩書きを脱げる、と?
 
HF: それもあると思います。
 
DN: プロライダーとセッションされると、彼らの滑りは参考にされますか?
 
HF: はい、してますね。ラインどりや、「ああいうふうに行けるんだ」とか。ひとりだと躊躇してしまうところも、みんなが行ってるし、あそこにランディングするんだって見えるから僕も行けたりとか……。
 
DN: そういったセッションでご自身の滑りの幅も広がってる?
 
HF: もちろん。
 
 

特化したプロダクトを生み出す日本人らしさ

 
DN: 一般スノーボーダーを見て何か思うことってありますか?
 
HF: あまりゲレンデは滑らないですが、(群馬)宝台樹に行ったときに思ったことがあります。フリーライディングをやってる人とパークをやってる人の壁が大きいなって。服装も雰囲気もどこか壁があった。そういった壁はなくなればいいのにって思いますね。僕はそんなにできないけど、グラウンドトリックって楽しいじゃないですか。フリーライディングで自然地形を飛んだりするのも楽しいですし。
 
DN: 昔は一本の板で何でもできることがカッコいいとされてましたよね?
 
HF: どちらかと言うと、僕も“ザ・パウダーボード”みたいな板には乗らないです。ちゃんとテールがあってオーリーできるモデルに乗ってます。ターンのときもテールが残っているほうが気持ちいいですから。
 
DN: 昔はオールラウンダーがカッコいいとされていたけど、最近はスノーボードがカテゴライズされているっていうか……。これは日本特有の文化なんですが、海外に比べるとグラトリ愛好家の人口が多いんです。そのためグラトリ専用ボードを一部のブランドが作っていたりします。
 

Hiroshi Fujiwara

 
HF: でも、それも日本の面白さかもしれない。その対極に位置するメーカーのボードも売れているじゃないですか? 極端でもないけど、何かに特化したものをしっかり作るっていうのは日本っぽいと思いますよ。
 
DN: なるほど。今はサイドカントリーやバックカントリーがメインかもしれないですが、それでもオールラウンドに遊ぶっていうスタイルは昔から変わっていないですか?
 
HF: そうですね。ただ、いつまでできるんだろう……。限界ってくるのかな? 体力的なものもあるから。
 
DN: でも、2年前に一緒に滑らせてもらいましたが、そんな衰えなんて微塵も感じませんでしたけど(笑)。ちなみにヒロシさんは、スノーボードを生涯スポーツだと考えていますか?
 
HF: そうだと言い切れると思います。体力的に無理になってしまったり、ヒザがダメになったりしないかぎりはね。
 
DN: では、スケートボードは?
 
HF: それが再びやり始めたんです。この前、ヨッピー(江川芳文氏)とシンちゃん(スケートシング氏)と3人で伊勢を旅したとき、30年ぶりくらいに強制的にスケートボードをもらったんです。ただ、スケートボードは自分をプッシュすると骨折しそうだから、抑えてやらないとな(笑)
 
 

ライフスタイルの3割を占めるスノーボード

 
DN: 仕事をされているうえで、何かスノーボードとの関連性を感じることってありますか?
 
HF: 人とのつながりですかね。スノーボードって自然や自分と向き合うものであると思うんだけど、それだけじゃない。IT系の人が飲みに行って、違う業種の人と話をして盛り上がり、「次、何か一緒のプロジェクトをやりましょう」みたいなノリってあるじゃないですか? それと同じようなことがあるかもしれない。
 
DN: 雪山で出会った人と何かが派生していく、みたいな感じですね。
 
HF: そうですね。
 
DN: 以前、ヒロシさんは仕事とスノーボードは相互作用があるって言われてたんですが、それはどういった部分で?
 
HF: 独特な人間関係のつながりっていうか、コミュニケーションスキルの向上っていうか……。
 
DN: コミュニケーションスキル?
 
HF: スノーボーダーって変わっている人が多いのに仲良くなれちゃうじゃないですか。それって、もしかしたら社会生活にも影響してるんじゃないかなって。職種がまったく違っても、ちゃんと話ができるから。野上さん、冬は山に行けてます?
 
DN: 仕事も含めて年間で20~30日くらいは雪山にいます。
 
HF: 僕も同じくらいかな? 行ければ毎週でも行きたいけど。
 
DN: その多忙なスケジュールで?
 
HF: 1週間くらい連続で行ってみたいですね。なかなか行けないですが(苦笑)
 
DN: 雪山に行かれるときは、どんなスケジューリングなんですか?
 
HF: よく滑りに行く(新潟)関温泉だったら、大抵の場合は前日の夕方くらいに出て、夜に現地に到着して泊まって、次の日に滑って帰る。基本はそのパターンですね。(群馬)水上だったら朝イチに東京を出発することもありますけど。
 
DN: 日常というか、ライフスタイルにスノーボードがとけ込んでいるんですね。
 
HF: 最近は海外が多いからスケジュールを確保できないですが、それでも12月になると、「この期間は何も入れないでブロックしておいて」って事務所に伝えてます。ここは山に行くからっていうのをカレンダーに書き込んでおいたり(笑)。で、そのなかで八甲田に行ったり、北海道に行ったりするんです。
 
DN: 先にスケジュールを空ける……雪を当てにいってるんじゃなくて、スケジュールありきってことですか? でも、ヒロシさんは(パウダーを)当てる確率が高いって聞いてますが?
 
HF: そうなんです。高いんです。
 
DN: 確か2年前、ヒロシさんがいらっしゃった八甲田に僕が行ったときは、めちゃくちゃ降っててロープウェーがずっと動かなかったのに最終日だけ開くっていう……すごい持ってる人だなって思いました。
 
HF: (笑)
 
DN: ヒロシさんにとって、スノーボードはご自身のライフスタイルのなかで何割くらいを占めているんですか?
 

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HF: けっこうな割合だと思いますよ。唯一やってるスポーツでもあるし、楽しみなので。3割くらいかな。
 
DN: けっこうデカいですね!
 
HF: だって、夏を過ぎるくらいにはウエアを買いに行こうって話が出てくるじゃないですか。実際に滑れる時期は少ないけれど、スノーボードのことを考えてプランを練る期間は長いと思うから。
 
DN: 夏に滑りたくなって南半球に行きたいと思われませんか?
 
HF: 冬に向けての準備とか、こういった話をするだけで楽しいから。それに夏でも仕事で会う人のなかには、たまにスノーボードやスキーをやってる人もいる。そうしたら、次の冬はあーだ、こーだって話になり、そうなるとスケジュールを組んだり。そんなこんなで時間が足りなくなるんです。
 
DN: なるほど。スノーボードが人間関係の構築にも繋がってるわけですね。
 
HF: そうですね。付き合う方々の年齢幅も上下に広いんです。下は10代の子もいたり、上は高齢のスキーヤーの方もいたり。そうそう、ここ10年くらいで変わったのが、スキーヤーと一緒にバックカントリーを楽しめるようになったこと。昔はスキーとスノーボードって、どこか敵対してたような感じもありましたが、今はないんじゃないかな。特にバックカントリーを楽しんでいる人の間ではゼロだと思います。逆に、スキーヤーが道を切り開いてくれたり助けてくれますから。
 
DN: スキーとスノーボードの線引がなくなることによって、より人脈も広がった、と?
 
HF: はい。広がりましたね。操上(和美)さんというファッションフォトグラファーの重鎮の方がいるんですけど、80歳を超えているのに今も現役でスキーをやられていて。しかも、普段も週に何回かはジムに通ってて、すごく若々しいんです。この前、やっぱり「次の冬は一緒に行きましょう」って話になりました。野上さんも、また一緒にどこかに行きましょうよ。
 
DN: はい、ぜひお願いします。
 
〈おわり〉
 
 

GUEST

 

Hiroshi Fujiwara

 
藤原ヒロシ
Hiroshi Fujiwara

 
1964年生まれ。fragment design主宰。1990年代から現在に至るまで、ストリートカルチャーやファッションの牽引者として活躍している。これまでにNIKEやLEVI’S、MONCLER、BVLGARIなど様々なブランドとコラボレーションし、数多のヒット商品を生み出してきた。また、ポケモンとタッグを組んだ「THUNDERBOLT PROJECT」を発足したことでも話題に。

text: Haruaki Kanazawa photos: Hikaru Funyu

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