BACKSIDE (バックサイド)

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REVIEW

五輪を目指す若きサムライたち。日本人2名が表彰台に立った国際大会舞台裏

2017.04.14

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オリンピックに出場するためには、SAJ(全日本スキー連盟)の強化指定選手に選ばれる必要がある。そのためには一定の競技基準をクリアしなければならないのだが、大舞台を目指す若手ライダーたちにとっては、実績がなくても出場可能なWORLD SNOWBOARD TOUR(以下WST)の国際大会で成績を残し続けるしか道がない。こうしたハングリー精神で海外遠征を繰り返している若手ライダーたちに注目。強豪ライダーが名を連ねる大会で若きサムライたちが躍動した、その舞台裏をお届けする。

悪条件にも有名ライダーにも負けず

3月24~26日、アンドラ・グランヴァリラで行われたWSTのエリート(最上位)クラス「Grandvarlira TOTAL FIGHT 2017」に参戦した國武大晃、飛田流輝、濱田海人、稲村奎汰ら、若き日本人ライダー4名が躍動した。
稲村以外の3名は、エリートクラスの大会に初参戦ということもあり、緊張した面持ちでレジストレーションを行い、公式練習へと向かった。

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今大会のコースは、ジブ×3セクション、キッカー×3セクションの計6セクションのセットアップ。公式練習は、予選前日の2時間のみというタイトなスケジュールで行われ、さらに前日からの降雪により難しいコンディションでの調整を余儀なくされた。参加ライダー全員、ボードが走りづらい雪質に苦戦しながら調整をしていたのだが、2ヒット目から3ヒット目の間がタイトで、しかもキックの向きに対してランディングの設定がズレているということもあり、3ヒット目のキッカーでランディングまで届いていないライダーが多かった。その夜のライダーズミーティングでキッカーの形状を変更する提案がなされ、少しRを削ってライナー気味にするということが決まった。

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予選当日の朝、窓を開けると大雪。加えて強風だったのだが、國武をはじめとする4名は予定されているタイムスケジュールどおりにゲレンデへと向かった。この状況でも大会が進行される可能性があるため、各々ボードのメンテナンスに余念がなかった。

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コース前にあるセンターハウスで待機が続くなか、12時にこの日のスケジュールのオールキャンセルが告げられる。同日夕方のライダーズミーティングで翌日に予選とファイナルを行うことが発表され、さらにルールが変更。予選は2つのグループに分けられて各ヒートから4名が勝ち上がる予定だったが、それを各3名とし、両ヒートを通して残り2名が選ばれることに。8名がファイナルへの切符を手にすることに変わりはない。

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大会当日。晴天に見舞われて気温が高く、昨夜からの積雪の影響によりボードが走りづらいという非常に難しいコンディションとなった。ヒート1に飛田、ヒート2に國武、濱田、稲村という振り分けで予選が開幕する。
ヒート1には、WSTトップツアーで活躍するタイラー・ニコルソンをはじめ、エミール・ウルスレッテンやディラン・トーマス、エリック・ウィレット、ウルリク・バダーシャーらが名を連ねる激戦ぶり。飛田は最初こそ周りのトップライダーたちに圧倒されて緊張していたようだが、日本人全員でファイナルの舞台で戦おうと、ほかの3名に背中を押され先陣を切った。1本目のランは最終セクションでランディングの際に手をついてしまい、56.00ポイントと得点を稼ぐことができず、運命の2本目へ。気合いを入れ直して挑む飛田は、予定していたルーティンをしっかりとメイクして79.66ポイントで3位につけ、ファイナルへとコマを進めた。
 
飛田流輝 2本目 79.66ポイント
CAB270オン270アウト→BSテールスライド to BS360アウト→FS180オンSWBS360アウト→CAB900ステールフィッシュ→BSダブルコーク1080ミュート→FS720メロン
 
先述した注目の外国人ライダーたちは悪条件のなか自分の滑りができずに、そのほとんどが予選で姿を消してしまった。それほど難しいコンディションだったということだ。
ヒート2では、飛田が予選を突破したことでテンションを上げる残りの3名が活躍。まずは濱田が、1本目で81.66ポイントと高得点を叩き出すと、國武は1本目からそれを上回る88.00ポイントを獲得。稲村は1本目では転倒してしまうも、2本目にしっかりと成功させ、89.66ポイントとハイスコアをマーク。日本勢3名がヒート2の2~4位を占め、4名全員がファイナルへとコマを進めたのだ。

1credit_Eduardo Mesquita

rider: Hiroaki Kunitake photo: Eduardo Mesquita

 
國武大晃 1本目 88.00ポイント
FSリップスライド270アウト→BSノーズスライド to FS360アウト→50-50 to FS180アウト to CAB270オン→CABダブルコーク900ミュート→FSダブルコーク1080ミュート→BS720メロン
 
濱田海人 1本目 81.66ポイント
CAB270オン→BSノーズスライド to FS180アウト→ハーフCAB to BS270オン→ダブルバックフリップ・インディ→BSダブルコーク1080ミュート→FS720メロン
 
稲村奎汰 2本目 89.66ポイント
トランスファーFS270オン→BSノーズスライド to ハーフCABアウト→FS180 to CAB270オン→CAB900ノーズ→FS1080メロン→BS720ミュート
 

仲間とともに上り詰めた表彰台

さらに気温が上がり、予選よりもボードが走りづらなくなるコースコンディションの中、4人でWSTエリートクラスのファイナルで戦える喜びを胸に、全員が最高の滑りをできるようにと念入りにワクシング。できるかぎりの準備を整えてファイナルに挑んだ。

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まず先陣を切った飛田は、勢いよくジブセクションを攻略するも、1ヒット目のキッカーでの抜けが合わずに転倒。続く濱田も、同じく1ヒット目のキッカーでテイクオフに失敗するという、何か魔物が住んでいるかのようだった。
そのようなイヤな流れを國武が吹き飛ばした。コンディションが悪いながらも、しっかりとスピードをキープしてルーティンを成功させ、85.00ポイントを獲得。暫定1位につけた。その後、稲村はスタートエリアからボードが流れてしまうというアクシデントに見舞われ、動揺したのか思うような滑りができずに7.66ptで1本目を終える。
時間が進むにつれて緩んでいくコース。2本目は4名ともしっかりとメイクすることができず、運命の3本目。飛田、濱田、國武と得点を伸ばすことができずにランを終えるも、稲村は78.33ポイントを記録して土壇場で3位に滑り込んだ。最終出走となったニコラス・バーデンがメイクできずに終了。エリートクラス初出場の國武が、見事初優勝を飾った。稲村は3位となり、日本勢2名が表彰台を射止めたのだ。

3位 稲村奎汰 78.33ポイント
トランスファーFS270オン→BSノーズスライド・フェイキーアウト to ハーフCABアウト→FS180 to ハーフCABオン・スイッチアウト→CAB1080インディ→SWBS1260メロン→BS720メロン
 
1位 國武大晃 85.00ポイント
FSリップスライド270アウト→BSノーズスライド to FS360アウト→50-50 FS180アウト to CAB270オン→CABダブルコーク900ミュート→FSダブルコーク1080ミュート→BSダブルコーク1080ミュート
 
互いに鼓舞し合いながら乗り切った今大会。個人競技とはいえ、仲間と一緒に戦っているように見てとれた。初出場となったライダーたちは、なにものにも代えがたい素晴らしい経験をしたことだろう。この経験をさらに活かし、世界のトップカテゴリーで活躍できるよう成長していってほしい。
國武は終始MCから、“15歳のヤングジャパニーズ!”と賛辞を受けていた。この優勝により、世界へ向けて少しはアピールできたのではないだろうか?
國武らライダーたちは、エリートクラスの大会で用意されているホテルでのボディケア(カイロプラクティック)やランチなど、その手厚いサポートに感動していた。大会主催者側の配慮を肌で感じることで、さらにトップカテゴリーへの出場意欲が湧くことだろう。

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大会でベストを尽くし、結果を残すことでしかオリンピック出場への道を切り拓くことができないわけだが、國武は今回の優勝によりWSTランキングを29位(2017年4月現在)まで上げることに成功した。こうして実績を積み重ねていくことで、夢の舞台へと一歩一歩、着実に前進していくのだ。今後の彼らの活躍に期待したい。

 
大会結果はこちらから

photos+words: Atsushi Nakamura

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