BACKSIDE (バックサイド)

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REVIEW

BURTONの新システム「STEP ON」で滑ってみた

2017.02.13

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1月下旬、BURTONから来季リリースされる注目の新システム「STEP ON」の試乗会にお誘いいただいていたのだが、ちょうどX GAMESの取材とスケジュールが重なってしまい、あえなく断念……。しかし、吉報が舞い込んできた。特別にプチ試乗会を開催してくれるとのこと。PRマネージャーを務めるK.I.氏とふたりでテストライディングに行くことになったため、どうせならパウダーを当てようぜ!とばかりに天気図とにらめっこ。双方の意見が合致した2月某日、群馬・水上エリアへ足を運ぶことになった。

 

これまでのステップインとは異なるニオイ

正直なところ、ステップインシステムに対して興味を持つことは、これまでのスノーボード人生で一度もなかった。
以前にBURTONからリリースされていたSI(ステップイン)システムは、ツマ先側とカカト側への加重・抜重を繰り返すスノーボードの動きに対して矛盾しており、足の内側と外側を固定するタイプだったため、従来のストラップバインディングのパフォーマンスに比べると劣ってしまう点が普及しなかった理由のひとつだろう。同じ理論で開発されていた他ブランドも含めて、生産の中止に追い込まれてしまった。ただし、中上級者には受け入れられなかったものの、バインディングの着脱が億劫な初心者や初級者に対するアプローチとしては一定の効果があったものだと推測する。
現存する製品については、その固定位置に関しては一線を画しており、カービングターンやパウダーターンを重視する層からは大きな支持を得ている。その理由は、着脱の容易さは言うまでもないが、バインディングのベースプレートとブーツのソール部分とで固定するため一体化していることから、レスポンスの速さや、少ない力でも大きなパフォーマンスを発揮できるという利点があるからだろう。
しかし、バインディングで両足が固定されていながらも、ストラップの伸縮性によって得られるベースプレート内での“遊び”がフリースタイルの動きには欠かせない。トリックの仕掛けにせよ、空中でのアクションにせよ、着地でのリカバリーにしてもそう。さらに、足裏感覚はフリースタイルスノーボーディングにとって重要である。だからこそ、これまで興味を持つことは一度もなかったわけだ。
昨年、今回のテストに同行してくれたK.I.氏から、STEP ONの話を聞いた。前述した経緯があったうえでのことなので、当然、懸念事項はクリアになっているのだと直感。第一次ステップインブームの際、某ブランドのシステムに不具合が生じ、回収騒ぎが起こったほどシビアなシステムだけに、BURTONが再び市場に投入するということは、万全なるテストを繰り返した結果であることは間違いない。後々聞いた話だが、北米や南米、日本など様々な環境で3,000時間を超えるテストが繰り返されていたようだ。
いろいろ調べていくと、当サイトでも記事にしたのだが、テリエ・ハーカンセンが開発に大きく携わっているということがわかった。昨年5月、スウェーデン・リクスグレンセンで行われていたバンクドスラロームの大会に出場していたテリエは、このSTEP ONシステムのバインディング&ブーツを使用していたのだ。この時点で3週間ほどのテストを重ねていたようで、3箇所のポイントを介して接続されること、加えて、「2、3年のうちに、誰もがこのSTEP ONを使ってるんじゃないかな」といった趣旨のコメントを残していた。あのテリエがここまで絶賛するシステムだからこそ、興味・関心を掻き立てられたことは言うまでもないだろう。
さらに、以前の同記事でも紹介したのだが、アレックス・アンドリューズがInstagramに公開していた動画のインパクトが強すぎた。両足同時にステップオンして(踏みつけて)、そのままスムースなオーリーを披露。これには、フリースタイルスノーボーディングの新たなる未来までも想像してしまったわけだ。

STEP ONってどんなシステム?

ここで、テリエが教えてくれた3箇所のポイントを介して接続されるSTEP ONの基本構造をお伝えしよう。まず、もっとも重要となるポイントがカカト部分。ブーツのカカト部に搭載されたヒールクリートが、バインディングのヒールバックルにロックする。後述するが、ヒールバックルにヒールクリートをロックさせる動作は簡単だ。
 

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この突起している部分がヒールクリート。上部のクリップは、パンツの裾を巻き込んでロックさせないためのもの。これを忘れてしまうと、パンツの裾が破れるなんてことも

 
 

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このヒールバックルがSTEP ONの心臓部分。ラチェットバックルと同じ仕組みをベースに設計されているので、ストレスフリーな脱着が可能だ

 
 
次に、バインディングのツマ先側に配置された2箇所のトゥフックと、ブーツのツマ先側の両サイドに突起しているトゥクリートが第2、第3の接続部分となる。こちらも後述するが、両方とも同時に固定させることは意外と難しく、内側→外側、外側→内側といったように、片方ずつ固定するようなイメージだ。
 

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ツマ先側の両サイドに位置するトゥフック。この穴に、ブーツ両サイドの突起しているトゥクリートを押し込む。ベースプレートとの一体型なので、脱着もスムースに行える

 
 

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装着するとこのような状態になる。ヒール部分がしっかりロックされている以上、外れてしまうような不安感はまったくない

 
 
リリース方法は簡単だ。バインディングのヒールカップ外側に付いているリリースレバーを引き上げることで解除できる。一歩前へ出るようにカカトを浮かす動作をすることで、簡単に外すことができた。
 

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ブーツを外したいときは、このリリースレバーを上げるだけ

 

STEP ONシステムに触れた第一印象

今回はほぼプライベート状態だったため、すでに行われていた公式試乗会のような開発サイドからの説明などは一切ない。なので、K.I.氏から雪山へ向かう車内でレクチャーを受けながら、ブーツを手にとり、ボードに装着していないバインディングを握りしめながら、あーでもない、こーでもないと質問を繰り返す。すると、気がつけば水上ICが近づいていた。
 

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平日にも関わらず、若干の渋滞。雪は深々と降り続いている。天気図を読んで行動するサーファーのようなスノーボーダーが増えていることは間違いないが、事前に仕事の休みを調整しているとすればかなりの強者だ。「スノーボード、流行ってんじゃね?」なんて会話を交わしていると、テストライディングに選んだ某ゲレンデに到着した。
 

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バインディングをボードに取り付け、いざゲレンデへ。ブーツはPHOTON STEP ONが用意されていた。何を隠そう、BOAブーツも初体験。編集者として失格と言われるかもしれないが、これまで見た目で毛嫌いしていた点は否めない。加えて、ブーツ内の伸縮性に対する疑念もあった。
しかし、伸縮性に富んだナチュラルファイバー製のレースであるNEW ENGLAND ROPESを搭載したBURTONのBOAブーツは、お世辞抜きに違和感がなく、当たり前だが脱着はかなりラク。さらに、従来のステップインブーツのようにソールに固定するための金具がないため、RULERに関して言えば、ヒールクリートとトゥクリートが付いていること以外は通常のブーツとまったく変わらない。PHOTONにはBOAで締め上げるアンクルストラップが装備されており、見た目の違和感は大いにあれど、重量は特に気にならなかった。ただし、試乗用ということで、通常は26cmのブーツを履いているのだが26.5cmだったため、多少なりともカカト部に違和感はあり。
そして、ボードを持つ手がいつもより明らかに軽い。ストラップが4本ないわけだから、当然と言えば当然か。ストラップがない違和感と、ストラップがない新しいルックスに新鮮さと期待感を抱きながら、いざリフト乗り場へと向かった。

実際に滑ってみて

リフト乗車前、STEP ONの着脱テストは当然行ったわけだが、停止している状態では思っていた以上に装着が簡単だった。先述したアレックスの動画のイメージが強すぎたため、一気に“ガシャ!”とステップオンしたくなるのだが、やはりカカトに重点を置いて踏みつけ、その後トゥ側を微調整しながらねじ込むというほうがイメージしやすかった。いろいろな映像を観ていて、トゥ側を脱着する際に足元が左右に若干動いているシーンが気になっていたのだが、なるほど。こういうことだったのだ。
 

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ストラップがないバインディングに違和感を覚えながら、スケーティングしてリフト乗車位置に向かう。5年ほど前、前足のヒザに重傷を負った経験があることからリフト乗車中はボードの重量が気になるのだが、手に持った感覚同様に軽いため、ストラップバインディングを装着したボードよりもラクに感じた。今回はマイボードでのテストだったため、この感覚に間違いはないはず。
そして1本目。リフトから降りてワンフットの状態で滑り下りながら、ひとまず後ろ足の装着に挑戦したのだが、一発で成功した。それほど簡単ではあるのだが、気をよくして(調子に乗って?)、斜度があるポイントでもワンフットの状態から後ろ足を装着し、すぐさまドロップインしてパウダーをいただくといったテストをしてみたのだが、2回ほどヒールバックルにヒールクリートを入れることができずワンフットの状態で転倒してしまったので、よい子は無茶なマネはしないように!
朝イチから滑り出したこともあり、STEP ONのテストライディングはパウダー三昧から始まった。パウダーライディング時の感想は……まったく違和感なし。ボードテストなどもハードなバーンで行わないとプロダクトの特性が判断できないことは理解していたので、まずは脱着の練習を兼ねて滑りまくった。
 

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パウダーをおかわりするために何本も繰り返し滑っていたわけだが、25年ほどスノーボードをしているだけに、習慣はなかなか変えられないもの。リフト降り場が近づいたときに意識していないと、バインディングを装着するポイントで停止しようとするクセがなかなか抜けなかった。通常であれば、装着するためにヒールエッジで雪面に溝を作ってボードを安定させ、バインディングにかぶさっているストラップをどかしながら後ろ足をベースプレートに通し、筆者の場合はアンクルストラップ→トゥストラップの順に締め、最後にアンクルストラップをもうひと締めするというルーティンだ。
BURTONが発表しているデータによると、1回の装着に30秒を要すると仮定し、1日に15ラン、年間に20日滑走というスノーボードライフを10年間続けた場合、バインディングの装着に1,500分を費やしているという計算になる。さらに1本のランを5分だと考えると、STEP ONに乗り替えることで300ラン分を得ることができると説明している。この話を聞いて、あながち間違っていないように感じた。いつもよりも時間を有意義に使えているという感覚を実感として得ることができたからだ。
ただし、ライディングレベルを選ぶことは間違いない。初心者や初級者で、いきなりこの動作を実践することは難しいだろう。とは言え、筆者も1本目から滑りながらの装着に成功しており、リフト降り場が急斜面という設定はあまりないことからも、中級者以上であればこの恩恵にあやかれるはずだ。
さらに加えれば、ヒールバックルにヒールクリートをロックすることさえできれば外れることはないため、ツマ先側の固定は滑り出してからでも十分に間に合う。筆者もリフトを降りて装着後、斜度のあるバーンに突入してスピードが出た時点で“カチッ”とトゥフックに入ったことが何度かあったが、カカトがしっかり固定されていれば問題はなかった。

ストラップバインディングとの違い

パウダーを満喫した後は、グルーミングバーンを徹底的に滑った。雪面からの反応がダイレクトだからこそ、ストラップバインディングとの違いが明確にわかるからだ。
先入観としては「ステップイン=反応が速い」と思っていたのだが、そういった感覚はまったくない。それは、ベースプレートとブーツのソールとが一体化しているわけではなく、ヒールカップよりも上部のカカトと、ツマ先寄りの側面とが固定されているため、ベースプレート内である程度の“遊び”があるように感じたからだ。慣れるまでは、ヒールバックルにしっかり固定されていないのでは?と何度も確認したほど。パウダーではあまり感じなかったものの、グルーミングバーンを滑り始めた当初は、違和感ではなく不安感を覚えていた。
しかし慣れてくると、そのフレキシブルさがいい意味でルーズなフィーリングを提供してくれているように感じた。一般的なストラップバインディングをいくらガチガチに締めたところで、アンクルストラップの伸縮性によってベースプレート内での一定の遊びを感じられるだろう。それと同じ感覚ではなかったものの、STEP ONに慣れることで、そういった作用があるのではないか。そう推測できる感覚だった。
なので、トゥ/ヒールサイドに加重してからエッジングまでのタイミングは、一般的なストラップバインディングとさほど変わらなかった。ただし、低速時のフロントサイドターンでトゥエッジを雪面に噛ませようとするとき、少し反応が遅い、もしくは鈍いような感覚が。これは、これまでの乗り方がストラップに体重を預けるような格好でフロントサイド方向へ身体を倒していたからではないだろうか。はたまた、ブーツサイズが合っていなかったことから、多少なりともブーツ内でカカトが浮いていたことに起因するのかもしれない。
 

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1月下旬に白馬五竜で行われたSTEP ON試乗会中の、テリエによる豪快なフロントサイドターン。低速時の話とは言え、この写真を見るかぎりは筆者の感覚なんて、ただのスキル不足なのかもしれないが……
photo: yoshitoyanagida.net

 

STEP ONの可能性

慣れてきたところで、ライディングしながら後ろ足を外し、再び装着するという動きを試してみた。これは意外にもあっさりと成功。後ろ足を外した際、滑りながらだとどうしてもベースプレートに雪が溜まってしまうこともあったが、ヒールバックルの噛み方に段階があるようで、ある程度の雪がベースプレートに溜まった状態でもロックできる仕組みになっているそうだ。パウダーで転倒した際にバインディングを外して再び装着するときなどにも役立つだろう。

一般レベルではあまり必要ない話かもしれないが、これまでのワンフットトリックはアプローチの時点からストラップを外していたことから、このSTEP ONにすることでアプローチ時は固定された状態で滑走でき、直前にワンフットの状態にすることも可能になる。また、アレックスの動画のように、ノーフットの状態から両足を一気にステップオンすることもできる。白馬五竜で行われたSTEP ONの試乗会では、そのアクションをテリエが実演してくれたようだ。
 

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ヒザを痛めているためトライできなかったが、いつか絶対に成功させたい究極のステップオン
photo: yoshitoyanagida.net

 
 

先に述べたように、フリースタイルスノーボーディングに必要不可欠なベースプレート内での遊び、言い換えれば足回りの“自由度”に関しては、ストラップバインディングで得られるフィーリングとは異なるものの、ステップインという視点から考えれば高次元で近しい感覚を実現していた。それでいて、スピーディな着脱ができることは間違いない。
たった一日のテストだったわけだが、さらにSTEP ONに慣れることができれば、新たなる可能性を感じることもできただろう。とは言え、いつもと同じ時間をゲレンデで過ごしたとしても確実に本数を多く滑ることになるため、正直に言うと、午前中で古傷が悲鳴をあげ、アラフォーの体力も削られていたのだが(笑)
最後に。ステップインやBOAにまったく興味がなかった筆者ではあるが、“アリ”だと思えたということは断言しておこう。来シーズン、新システム「STEP ON」による新感覚のライディングフィールがシーンに提供される。期待していいだろう。

 

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MEN’S STEP ON
▷サイズ: S~L
▷カラー: BLACK
▷価格: 42,000円+税

 
 
 

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PHOTON STEP ON
▷サイズ: US 7~12
▷カラー: BLACK
▷価格: 52,000円+税
 
 
 

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RULER STEP ON
▷サイズ: US 7~12
▷カラー: GRAY TIE DYE
▷価格: 42,000円+税

BURTON STEP ONページ

text+photos: Daisuke Nogami

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