BACKSIDE (バックサイド)

BACKSIDE (バックサイド)

http://backside.jp/column-068/
5411
AyumuHirano
607

COLUMN

W杯ハーフパイプの滑りから垣間見えた平野歩夢の大きな可能性

2017.09.09

  • facebook
  • twitter
  • google

ニュージーランド・カードローナで行われたFISワールドカップ・ハーフパイプ種目の結果は速報でお伝えした(記事はこちら)とおりだが、ここでは表彰台に上がった男子3名のベストラン映像を紹介しよう。ワンツーフィニッシュを果たした日本人ライダー2名について解説する。

当日はセミファイナルがキャンセルになるほどの強風が吹き荒れており、リップラインが波打つなどパイプの形状も含め、出場ライダーにとっては厳しいコンディションだった。それを裏づけるかのように、公開練習では勢いある滑りを披露していた平昌五輪の金メダル候補であるスコッティ・ジェームス(オーストラリア)は、負傷したわけではないにも関わらずDNS(Do Not Start: 棄権)となった。
そうした状況ながら優勝を果たした15歳の戸塚優斗は、2本目で物怖じせずに勢いのあるライディングを披露。先述した速報記事でも触れているのだが、パイプの状況に左右されずに自分の滑りが出せる冷静沈着なライダーと、戸塚の所属ショップであるHEAVEN STORE.代表の中本健太郎氏が触れているように、2017年3月に北海道・さっぽろばんけいで行われたFIS全日本選手権でも転倒者が続出するほどパイプの状態が悪かったにも関わらず優勝を飾っているのだ。
今大会でもその安定感が発揮され、FS1080→CABダブルコーク1080→FS1260→BS540→FSダブルコーク1080というルーティンを圧倒的なエアの高さで決めたことが、ジャッジが好印象を受けた理由に違いない。
いっぽう、2位となった平野歩夢の1本目。1ヒット目にストレートエアを選択し、さらにはメランコリーをグラブしにいこうとするもバランスを崩してインディに変更するなど、パイプに合っていない印象を受けた。しかし、2017年3月に米コロラド州ベイルで開催されたBURTON US OPENで世界初となる大技・FSダブルコーク1260を大会で披露し、転倒はしなかったものの後傾となり大きくバランスを崩していたのだが、そのトリックをこのランでは成功させている。さらに言えば、今大会のルーティンはBSインディ→FSダブルコーク1080→CABダブルコーク1080→FSダブルコーク1260→BS540なのだが、バック・トゥ・バックのダブルコーク1080の直後にこの大技を組み込んでいる点に価値が見出だせる。ライダー心理とすれば、高難度なトリックを繰り出す前は低回転スピンなど確実性の高い技でひと呼吸置きたいところ。このことからもわかるように、それほどの完成度を誇るのだ。
しかし、話はここで終わらない。タイトルに綴った彼の大きな可能性は次の2本目に示されていた。このランは本ムービーに収録されていないのだが、BSメランコリーからルーティンを展開すると2ヒット目にFSダブルコーク1440を繰り出したのだ。回しきってはいたものの、着地で後傾となりバランスを崩してしまった。この技はYOLO(You Only Live Once: 人生一度きり)フリップと銘打たれソチ五輪で話題となった、現時点のパイプ競技における最高峰トリックのひとつであるCABダブルコーク1440をノーマルスタンスから繰り出したもの。縦と横と斜めの回転軸が複雑に融合されているだけでなく着地がスイッチスタンスになるため、難易度はさらに上がるわけだ。
CABダブルコーク1440に関しては平野もすでにものにしており、このトリックを決めてソチ五輪で金メダルを獲得したイウーリ・ポドラチコフ(スイス)とショーン・ホワイト(アメリカ)の3名しか大会で成功させたことがない。先述したようにFSダブルコーク1260を大会で成功させたのは平野が初であり、逆転を狙ったランで同1440を出せるほどの精度を誇るということが今大会で証明された。
平昌五輪の舞台でこのダブルコーク1440を連続して決められるかどうか。ここに金メダル争いのカギがあり、平野は一歩抜きん出ているということだ。

RELATED POSTS

LOAD POSTS