BACKSIDE (バックサイド)

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Taku Hiraoka competes at the Burton US Open, in Vail,Colorado, USA on March 7, 2015
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COLUMN

プロスノーボーダーとは何か

2016.11.30

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オリコンが発表している「好きなスポーツ選手ランキング2016」の1位は、男性部門でテニスの錦織圭が2連覇を達成し、女性部門はレスリングの吉田沙保里が初受賞となった。錦織は一昨年9月に行われた全米オープンテニス2014で、アジア人初となるグランドスラム準優勝を果たしたことや、リオ五輪で日本にもたらした96年ぶりとなるメダル獲得などが要因だろう。一方の吉田は、周知されている世界トップの実力だけでなく、リオ五輪で無念の敗北を喫して流した涙も含め、その人間性やリーダーシップなどが評価された結果ではないだろうか。
 
どんなスポーツにも言えることだろう。「やってみたい」という好奇心や興味からそのスポーツを始め、のめり込んで競技に精通していくうちに、トップ選手に関心を持つようになるもの。もしくは、ある選手に憧れを抱き、「自分もそのステージに立ちたい」という想いから始めるケースもあるだろう。プロ(フィギュアスケートなど競技によってはアマも含まれる)スポーツ選手とは、みなに夢や希望を与える華やかな職業である反面、実力次第で天と地がはっきりと表れる厳しい仕事だ。
 
プロスポーツ選手になるための条件は各スポーツによって異なるわけだが、大きく4つに分けることができる。①入団・契約型(スポーツ団体と契約すればプロになれるもの)、②テスト型(プロ試験や選考に合格する必要があるもの)、③養成型(研修所を卒業する必要があるもの)、④宣言型(プロ宣言し、スポンサーと個別に契約するもの)となるわけだ。代表的なスポーツを挙げてみると、①サッカーや野球など、②ボクシングなど、③公営競技(競馬や競輪など)、④卓球や水泳など、となる。
 
では、プロスノーボーダーにはどうしたらなれるのか。上記を踏まえると2パターン存在し、②と④がそれに当てはまる。
 
まず②から説明すると、JSBA(日本スノーボード協会)に入会して競技者登録を済ませ、同協会主催の地区大会や公認大会に出場。全日本選手権で規定順位に入るか、JSBAポイントランキングで規定順位をクリアすることで、日本ではJSBA公認プロ資格が与えられる。また、推薦を獲得してPSA ASIA(プロスノーボーダーズ・アソシエーション・アジア: 国協会公認プロスノーボーダーによる選手会)が公認するプロトライアルに参加して規定順位以内に入る、もしくはプロトライアルランキングで規定順位をクリアすることで同プロ資格を得ることができるわけだ。
 
ご存知の方もいるかもしれないが、改めて②に属するプロスノーボーダーの現状をお話しよう。1991年よりJSBAがプロスノーボーダーの公認を行うようになり、公認されたライダーたちはPSA ASIAに登録してプロ活動を行う、とされている。現在登録されているプロスノーボーダーは368名(スノーボードクロス・アルペン競技専門の選手を含む)。SAJ(全日本スキー連盟)のナショナルチームに所属する若手ライダーは重複して登録しているケースが多いが、馴染みのあるライダーが少なすぎる。言い換えれば、メディアに登場するライダーたちは、ほとんどと言っていいほどPSA ASIAに登録していないのだ。
 
言うまでもないが、プロ公認されるライディングスキルが足りないのではなく、もともとは登録していたライダーが多い。だが理由あって、“プロという資格”を捨てたことになる。
 
一般的なプロとアマという定義では、スポーツの場合、「それ自体が職業かつスポーツ活動を観客に見せ報酬を受け取っている者」を指す。国内では「TOYOTA BIG AIR」などがその活動の場であったのだが休止となってしまい、大会の数は減少の一途を辿っている。ちなみに、オリンピックについてのハンドリングはSAJが行っている。この“歪み”が問題のひとつであることは事実である。しかし、SAJがプロ公認を行っているわけではないので、ここでは割愛させていただく。
 
また、コンテスト以外のプロ活動として、写真や映像を残すことに重きを置いて活動しているライダーたちは、雑誌やDVD、オンラインなどメディアでの露出が目的となる。彼らは④に属するプロスノーボーダーであり、プロ宣言をして各企業やメーカーとスポンサー契約を交わしているわけだ。
 
これらを知ってどう思うだろうか。プロスノーボーダーとは夢や希望を与える存在でなければならないはずが、資格を有するだけのスノーボーダーのことを指す言葉として、世の中に浸透してしまっているのだ。
 
冒頭でも述べたように、プロスポーツ選手に対して憧れを抱いた経験は多くの人にあるだろう。それは、スノーボードの世界も例外ではない。しかし、カルチャー的な遊び要素が強かったことで爆発的に人口が増えた背景もあり、オリンピックを除くと競技性が他スポーツほど浸透していない。それも、プロスノーボーダーという定義が確立するに至らなかった一因かもしれない。反面、写真や映像を介した“自己表現”がプロの仕事として成立している、特殊なスポーツでもある。
 
昨年11月、ソチ五輪ハーフパイプ銅メダリストである平岡卓は、Red Bullと契約した。日本人スノーボーダーとしては角野友基や鬼塚雅らが名を連ね、過去には布施忠が契約していた時代もあっただけに、いわば、選ばれし者だけがそのチャンスをつかみ取ることができるのだ。
 
しかし、平岡も含め、角野や鬼塚、そして布施もPSA ASIAには登録していない。これが、日本スノーボード界の現状である。

rider: Taku Hiraoka photo: Burton/Red Bull Content Pool

 
※弊誌編集長・野上大介がRedBull.comで執筆しているコラム「SNOWBOARDING IS MY LIFE Vol.55」(2015年11月19日公開)を加筆修正した内容です

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