BACKSIDE (バックサイド)

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COLUMN

競技だけではない、ハーフパイプの秘めたる魅力

2016.09.13

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1998年の長野五輪以来、ハーフパイプはオリンピック種目として競技化が加速した。その勢いは今も衰えることなく、ライディングレベルは進化の一途をたどっている。
 
反面、日本中のゲレンデを見渡してみるとハーフパイプは激減した。維持管理のコストがかかる問題や、エアターンを行うためにはカービングターンを含めた最低限の滑走スキルが求められるため、入り口としてはそれを必要としないパークのほうが好まれる傾向が著しくなったためだ。
 
そこで、ひとつの映像を紹介したい。かつてはコンテストシーンを席巻し、現在はマウンテンフリースタイル界を牽引するアンティ・アウティによる、ニュージーランド・カードローナで撮影されたミニパイプでのライディング映像『MINI PIPE DREAMS』だ。

昨今の競技用ハーフパイプは7m近くの高さを誇る壁がそびえ立ちスーパーパイプと呼ばれているが、そのサイズに合わせるとなると斜度も20°程度は必要になってくる。これはスペシャリスト専用のコースであり、一般スノーボーダーではトランジションでかかるGにすら耐えることができないだろう。
 
だが、パイプにはライディングの総合滑走力を養うための要素が詰まっており、1本のランで何ヒットも飛べる魅力あるフィールド。ひと昔前はメインパイプとして存在していた4m程度のパイプは現在“ミニパイプ”と称されるわけだが、このフィールドの魅力を再確認できるムービーとなっている。筆者もそうだが、以前にJSBA(日本スノーボード協会)の大会でブイブイ言わせていた往年のスノーボーダーたちが食い入るようにこのムービーを観ている姿が容易に想像できてしまう。
 
出演ライダーはアンティを筆頭に、ニュージーランドに拠点を置く日本にも造詣が深いウィル・ジャックウェイズ、そして紅一点のエンニ・ルカヤルビ。彼らが繰り出すメソッドやアーリーウープ、トゥフェイキー……ミニパイプだからこそリアリティを帯びていて、それでいてカッコいい。きっと、パイプが滑りたくて仕方なくなるはずだ。
 
冒頭で述べたようにパイプは激減したため、滑るためには遠出を強いられるエリアのスノーボーダーも少なくないだろう。いきなりスーパーパイプに挑戦することはオススメできないが、一般サイズのパイプが常設されているゲレンデもエリアごとに存在している。これまで経験がないのであれば今シーズン、ぜひ挑戦してほしい。ひと筋縄にはいかないが、エアターンで飛べるようになったとき、あなたの滑走スキルは確実に上がっているはずだから。

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