BACKSIDE (バックサイド)

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INTERVIEW

競技者から表現者へ──平岡卓の新たなる野望

2019.01.15

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「オリンピックはもう目指さない」。ソチ五輪のハーフパイプ銅メダリストはとても落ち着いた表情で、その確固たる想いを口にした。オリンピックだけでなく、X GAMESアスペン大会で準優勝、BURTON US OPENでは表彰台のトップに立った経歴を持つ日本屈指のコンペティター、平岡卓だ。彼は23歳を迎え、これまで精力を注いできた競技の世界を離れ、自身にとって新たな世界へと歩み始めた。そこには、ハーフパイプのように決められた舞台があるわけではない。待ち構えているのは、ありのままの雪山だけ。そう、バックカントリーを主戦場とし、己のスノーボーディングを表現することを決意したのだ。競技者から表現者へ。そんな新章をスタートさせた平岡に迫る。

とにかく上手くなりたい

とにかく上手くなりたい

幼少の頃よりハーフパイプに打ち込み、10代の頃から世界の強豪たちとしのぎを削ってきた平岡。常にハイエアとスタイルに強いこだわりを持ち、大会でも彼は“魅せる”ライディングでオーディエンスとジャッジのハートをガッチリとつかんできた。たとえダブルコークや高回転スピンだとしても、平岡が繰り出せば実に彼らしいスタイルがそこに存在した。

しかし、ここ数シーズンのコンペシーンではトリック戦争が激化。スタイルを入れる余地がないほどの難度の高いトリックをメイクしなければ、大会の上位に食い込むことが難しくなっていた。

「もっと自分に合ったライディングスタイルを追求したい。実は、20歳くらいの頃にそう感じ始めていたんですよね。ただ、再びオリンピックを目指すって決めてからは、もちろん本気で取り組んでましたよ」

だが、平昌五輪では直前のケガにも悩まされ、思うような成績を残すことができなかった。それ以上に、自身が納得のいくスノーボーディングを表現できないまま幕を閉じる結果に。

大会でも自分のスタイルを貫く。自分がカッコいいと信じるライディングで勝負する。そのうえで勝つ。そうしたスタンスで戦い続けてきたのだが、スタイルよりも難易度を優先せざるを得ない、そんなコンペシーンの流れに対して、平岡は違和感を覚えていた。そして、平昌五輪閉幕後に帰国した彼は「もっと純粋にスノーボードを楽しみたい」と北の大地を目指したのだ。

「カメラマン(中田奨氏)に誘われていたのと、オリンピック開催中に中井(孝治)くんからも一緒にセッションしようと言われてたので北海道に行きました。バックカントリーをガッチリと滑ったり、先輩たちとセッションしていくなかで改めて思ったんです。これがスノーボードだなって」

 

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オリンピック後は水を得た魚のように北海道のバックカントリーで飛びまくった

 

平岡を世界トップレベルのコンペティターへと成長させたのは、「とにかくカッコよく滑りたい」という純粋な想いだった。今はそれに加えて「とにかく上手くなりたい」という想いが彼を突き動かしている。カッコよく滑るためには、もちろん上手くなる必要があるわけだが、ここで言う“上手い”とは、トリックだけでは判断できないスキルの高さや経験値のことも含んでいる。

ひとつのターンを見ただけでわかる上手さ。ラインの選び方を見ただけでわかる上手さ。すべては、バックカントリーという知れば知るほどに奥が深い世界で自分を最大限に表現するために。そして、手つかずの雪山に己のスキルを総動員して向き合いオリジナルのラインを刻むために。

「昨シーズンの北海道でのスノーボードはすべてが新鮮だったし、自然のなかで遊ぶ難しさを知りました。でも、それ自体が楽しかった。自分のなかで、また新しいスノーボードが始まった感じがした。あと、以前に比べて今はフリーライディングが楽しく感じるんです。昔は単に流してただけだけど、ターンひとつにしてもこだわり始めると奥が深いし、今はシンプルに山を滑る、山で遊ぶってことに没頭したいなって。何よりも“とにかく上手くなりたい”って思うようになりました」


自由なスノーボードを求めて

自由なスノーボードを求めて

もちろん、その準備を平岡は着実に進めている。昨シーズンはバックカントリー経験が豊富な先輩たちから様々なことを学んだ。ターンの重要性、ラインの選び方、地形の活かし方……など。さらに今シーズンも、北海道で雪崩の講習会に参加するなど、専門的な知識を得るため積極的に動いている。すべては上手くなるために──それはギアにも同じことが言えた。ハーフパイプで勝負していた頃は、ハードフレックスでレスポンス重視のCUSTOM Xに搭乗していたのだが、現在は?

「オリンピックが終わってからボードは扱いやすいCUSTOMを使ってたけど、今シーズンはFAMILY TREEのSTUN GUNに乗ることが多くなってますね。とにかくカービングが調子いいし、パウダーも滑ってるだけで楽しいから、かなりハマりました。バックカントリーでより自由度の高い動きができるギアを探すために、今はいろんなプロダクトを試したいと思ってて」

 

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新たな相棒にまたがり挨拶代わりにマッシュを攻略 photo: Kentaro.A

 

ボードだけでなくブーツも変えた。競技に打ち込んでいたときは比較的クイックに反応するモデルを好んでいたが、今シーズンからはバックカントリーでのハイクがしやすいVIBRAMアウトソール搭載で自由な締め分けができる、PHOTONのBOA®ブーツを愛用している。

「今シーズンに入って自分からBOA®ブーツを使ってみたいとBURTONにお願いしたんです。とにかく履くのがめっちゃラクだし、BOA®だけどワイヤーじゃなくてシューレースが使われていて、締めてもガチガチと固定される感覚もない。締め分けもできるし、自分の求めているスタイルにも合っていて、より自由度が高くなったっていうか。今となっては、このモデルでコンペにも出られたなって思えるくらい調子がいいですよ。北海道の寒いところでも問題なく使えてますしね」

 

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平岡が絶賛するフィーリングのよさは伸縮性に富んだシューレースに秘密が photo: Kentaro.A

 

BOA®ブーツを毛嫌いするフリースタイラーは不思議と多いのかもしれない。だが、何事もそうだが食わず嫌いは損するだけだ。新たな可能性が待っているにも関わらず、その扉を自分の手で閉ざしているのだから。

さらに、平岡はウエアもハイエンドラインのAKに変更した。

「バックカントリーをメインに動くようになってから、だいぶ山男になってきてるかもですね。格好だけはいっちょ前に(笑)。だから、それに負けないように頑張らないとなって」

適材適所という言葉があるとおり、まさに平岡は自身の目指すスノーボードを実現するべく、メインフィールドとなるバックカントリーにフィットするギアをセレクトした。そして、快適かつ安全に過ごすための知識を得て、日々経験を積んでいる。

より自由なスノーボードを求めて。


新たなる野望

新たなる野望

では、平岡が目指している最終目的地であり、オリンピアンが目指す新たなるスノーボーディングとは?

「ゆくゆくは山に引きこもって自分のスノーボードと向き合っていたい(笑)。そうなったら絶対にもっと自分が開放的になれるっていうか、自分に合った生活や滑りを追求できるんじゃないかと思うから。地元にスケートパークを作ったのもそうですけど、自分でもっといろんなものを作って自由なスノーボードができる方向に持っていければと思ってます。その第一段階としてムービーを作りたい。スポンサーを集めて制作するスタイルじゃなくて、完全に自分たちの世界観を表現できるムービーを。メディアのひとつの企画に組み込まれるんじゃなくて、イチから自分たちの手で作ってみたいんです」

そのため、現在の平岡は盟友である赤田佑弥と撮影に明け暮れる生活を送っている。

 

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ハーフパイプで培った滑走スキルを武器にディープパウダーを駆る

 

「オレはフリーライディングに軸を置きながら、佑弥はストリートを中心に。でも、互いに交われるところもあるだろうし、2人だけにこだわらず、いろんな場所で、そこにいる仲間も巻き込みながら撮影していく予定です。そして、自分たちのスノーボードやライフスタイルが伝わるような作品にしたいなって。とりあえず年末に北海道で撮影した映像を編集して、ライト版のムービーをウェブで配信する予定です。それがスタートって感じですね」

ハーフパイプの世界で頂点を極めた男の新たなる挑戦。スノーボード本来のカッコよさ、スノーボード本来の楽しさを伝えること。そして、スノーボードを中心とする自分たちのライフスタイルが滲み出る映像作品をリリースすること。現在の平岡は、その新たなチャレンジに楽しみながら取り組んでいる。

「山で撮影するっていうのも、自分たちのムービーを作るっていうのも初めてのことだから、今は探り探りやってます。それと同時に、あくまで自分のペースでフリーライディング……いや、スノーボードが上手くなりたい。それがめっちゃ重要かなって思ってます」

自分のペースを崩さない。それは、大会を転戦していた頃から平岡が実践してきたことである。

最後に聞いてみた。「今、スノーボードは楽しい?」と。そこには、希望に満ち溢れた笑顔でうなずく、若き山男がいた。

text: Haruaki Kanazawa photos: Tsutomu Nakata

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平岡 卓(ひらおか・たく)

生年月日: 1995年10月29日
出身地: 奈良県御所市
スポンサー: BURTON、G-SHOCK、NEW ERA、CALLA FACTORY

photo: Kentaro.A

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  • BURTON
  • PHOTON BOA®
  • ▷サイズ: 25~33cm
  • ▷カラー: BLACK
  • ▷価格: 52,920円

BURTONのBOA®ブーツのみに使用が許されているNEW ENGLAND ROPESを採用しているため、伸縮性に富んだ自然な履き心地を高次元で実現。3つのゾーンを個別に調節することでヒールホールドを格段とアップさせるロックダウンレーシングを搭載した。サイドカントリーなどハイクアップ時に必要なトラクションを提供するVIBRAM®アウトソール、B3ジェル、そして体温を利用して足を温めるスリーピングバッグ反射ホイルを採用している。高いレスポンス性とフィット感を誇るハイエンドブーツだ。

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